先日の21号に匹敵する勢力だと言うのだから油断できない。
台風24号が大阪へと真っ直ぐ近づく日曜日、遠出は控え近場で過ごすのが賢明と言えた。
朝8時半過ぎ、まずは長男を近所の図書館に送った。
何かあればすぐに迎えに行けるし、建物自体が避難場所にもなるから勉強場所として手堅い選択だった。
家へと引き返し、続いて家内を連れて近くのスーパーに買い物に出た。
台風に備え近隣住民がこぞって行動を前倒しにしているかのよう、朝9時なのにすでに駐車場にはクルマの列ができていた。
しばらく待ってクルマを停め売り場に向かうが、店内も混雑しレジには長い列ができていた。
その様子は非常事態を告げていた。
切迫するような店内の雰囲気に煽られて、あれもこれもと思いつくまま商品に手が伸びていく。
しばらく籠城しても大丈夫というくらい、結局、かなり大掛かりな買い物をすることになった。
その足で家内も図書館に送ってこれで晴れて自由の身。
わたしと二男は家で留守番。
借りてあって映画を見てわたしは過ごし、二男は自室で勉強に励んだ、多分。
昼は横丁の中華屋で五目焼飯やら餃子やら五目焼きそばやらを買ってきて二男と分けた。
昼を過ぎて雨もなければ風もない。
公園では親子連れがにこやか遊び、いつもの日曜の表情と何ら変わるところがなかった。
阪急電車が午後3時で運転を取りやめると発表したせいだろうか。
図書館の閉館が2時に早まった。
前回とは大違い。
暴風に吹き晒され建物が豪雨に打たれても決められたとおり夜まで開館していた。
図書館も台風21号で十分に凝り阪急電車に追随したということなのだろう。
午後2時ちょうど、図書館近くにクルマを停めた。
あたりは微か小雨が降る程度で傘もいらない。
まずは長男が現れた。
何か食べるかと聞くと、いまカレーを食べてきたばかりだと彼は言った。
かつてのラグビー仲間の親が切り盛りするカレー屋が近くにあった。
律儀にも長男はそのカレー屋に通い続けているということだった。
続いて夕飯の買い物を終えた家内も姿を見せた。
長男は同じ図書館に自分の母親がいて注視されていたことに全く気づいてなかったようだ。
当の母親だけが人知れず実の息子の姿を目で追っていたということになる。
自宅に戻って午後2時半、家族の避難は完了した。
あとは息を潜めて台風をやり過ごすだけである。
三時のおやつはマカロン。
家内がいれてくれたお茶を飲みながらのんびり映画をみる。
一方家内は久々家族が揃う夜に備えて夕飯の支度をはじめた。
そして子らは各自の部屋で勉強に勤しんだ、多分。
この日のメニューは野菜たっぷりの豚しゃぶ。
天災地変が近づくからだろうか。
血の巡りが活発になり何やら胸も高鳴り食欲も増した。
四人で鍋を囲んで、だから男子三人は我先にと豚しゃぶを獲り合った。
台風24号に備え、この夜、わたしたちは洞窟のなか身を寄せ合っているようなものであった。
小さな輪であったが、どんな嵐が来ても大丈夫、そんな安心感に包まれていた。
生じていたのは一体感。
ここ最近では珍しく、皆の胸に色濃く残る家族共有の一日となった。