KORANIKATARU

子らに語る時々日記

末席から目にした大阪星光大忘年会2015年


客先から戻っての空き時間、ロシア制作の映画「ガガーリン」を見る。

地球は青かった、という言葉を知らぬ人はない。
その人物についての伝記である。

1961年、アメリカに先駆けソビエトは有人宇宙飛行に成功した。
国家の威信をかけたこのプロジェクトの舞台裏が映画によって明かされる。

無重力状態が人体にどのような影響を及ぼずのか。
それすら不明なのに、精鋭パイロットのなかから選び抜かれたガガーリンがボストーク1号への搭乗を命じられる。

何が起こるか分からない、死を賭しての飛行であった。
彼にのしかかったであろう不安と恐怖については想像を絶する。

この飛行の過程にガガーリンの生い立ちや日常の暮らしが重ねて描かれる。
出自は貧しかったが彼は優秀であった。
空軍に入隊し頭角を現す。
恋をし娘を二人授かる。

人間ガガーリンの立体感が増せば増すほど、国家の威信を背負わされるその極限状況に怖気が走る。

ソビエトはアメリカに先んじたいとの一心。
その志を受け、パイロットらは死と隣合わせの恐怖などおくびにも出せず、勇ましく英雄的に振る舞わざるを得ない。

ガガリーンは無事に帰還することができたが、これはひとえに運が良かっただけのことであり一から十まですべて決死の飛行、どう考えても生きて帰ってきたことの方が不思議と言えた。

そして、飛行においてだけでなくその後もガガーリンは広告塔として国家的野心に振り回されることになる。

ガガーリンは不遇のなか、34歳の若さで事故死する。

ガガーリンのようになって欲しい。
そう願う親は稀であろう。
世は思惑に満ち、子の身のためを親身に考える存在はごくわずか限られている。


夕刻、阪急インターナショナルへと向かう。
大阪星光大忘年会が行われる。

受付時間の午後5時30分、会場入口はすでに賑わっていた。

知った顔に挨拶するも口をきける諸先輩は少なくしばらく手持ち無沙汰の時間を過ごす。
出席一覧を眺めると33期もちらほら名を連ねている。
彼らの到来を待つ。

父は28期、子は58期、その親子星光生による乾杯の音頭で幕を開けた。

会は一部ご来賓の席を除き立食形式で行われた。
東京から訪れていたヒサヒロと言葉を交わす。
ああ懐かしい。
この日記を読んでくれているという。

ワタルが相変わらず絶口調で、それが照明弾のように作用して円卓の33期密度が増してくる。

モッチン、ヒガシといった奈良県医メンバーはこの日に合わせて大学の追いコンがあるというので当然の出席で、その他、セノー、天六いんちょ、それにタコちゃんといった面々が見えた。
ヒガシからタニやコースケの近況を聞き、在校中には交流のなかった高入組のオガワ君とも話すことができた。

しかし、如何せんの立食。

私たちはどうやら立食を不得手とするようで、なんとも不思議なことであるが、まるで通りすがりで話すような、他人行儀な言葉不活性な空気が最後まで拭えなかった。

「黙って喋る」という以心伝心話法をもっぱらとする33期においては、腰据える椅子がないとまさに話は始まらないということのようである。


人の集まりには濃淡がつきまとう。
濃い場所は濃く、淡い場所は淡く、淡いもの同士が結び合って濃くなるということはない。

いい人だらけであるけれど、性根がシャイ。
濃いもの同士が連結しないと、横断的な交流は発生しがたいように思えた。

だから、吹田市長や大阪府警本部長といった大御所が会場にいらしたということも淡い場所からは窺い知ることはできず、後で噂で耳にするといったこともやむをえないことであった。

出席名簿を見ると参加者のない期も散見された。

まずは小さな集まりで連結のとっかかりのようなものを芽生えさせる取り組みがあったほうがいいのかもしれない。
そう思えば、毎月行われている「倶楽部星光」などはその役割を担う上で格好の集まりだと言えそうだ。

まだまだ縦に66期ほどの小所帯。
今後工夫次第で敷居なくいい人だらけが入り交ざる度が増していくに違いない。

ゆくゆくは33期冬会を大忘年会に接続させるといった賑やか楽しいこともできるようになるはずだ。


この日もっとも印象深い話はワタルからもたらされた。

強面で名が通る、いま中1を担当するあの先生。
卒後、ワタルやタローやタケトーは何度も食事に連れられたのだという。

膝つき合わせて付き合って、ワタルらはその人柄と価値観に触れそれが醸成された背景を知ることになった。

怖い先生の優しい素顔について種明かしをすればその教育効果に支障が生じるためつまびらかにはできないが、世は鬼ばかりではなく、心をあえて鬼にする仏もあるということである。


箱根山体操で会は佳境に入り校歌斉唱で大団円を迎えた。
控え目ではあっても実質確かで心おおらかな人物らを見渡し星光独特の校風のようなものに感じ入る。

学校生活は実り多く今後大忘年会をはじめとする同窓会活動も更に活発となっていく。
大阪星光は卒業してから更にいっそう楽しみが盛り沢山。

来月には中学入試。
190名の可愛い後輩たちがここに続くことになる。

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