KORANIKATARU

子らに語る時々日記

雨かなと思えば傘を差す

日曜夜、宅急便が来たとき、わたしは一階にいた。
ちょうど風呂あがり、腰にバスタオルまいただけの姿で門まで出て応対した。
結構な嵩の荷物であったので手招きし玄関先まで搬入してもらう。

このドライバー、家内によればいつも無愛想でつっけんどん、強面な態度だそうで、隣家の奥様ともその意見は一致するという。

もちろん、風呂あがりで上気した顔、上半身ハダカのおっさんが相手となれば、やむにやまれずドライバーも愛想笑いのひとつやふたつ振りまかざるをえない。

世の中、得体の知れない強面ほど怖いものはない。

文字通り衣服まとわずの格好であれば、社会的な属性を窺う手がかりはなく、その持ち札の強弱を見定めようがない。
不細工不器量で、がたいがごつければ、最大限に警戒し丁寧に対処するに越したことはないということになる。

だから当然、逆の立場に置かれた場合には、そのドライバーと同様に振る舞えばまず間違いないと言えるだろう。

もちろん大阪の路上で氏素性定かならぬ強面と出くわせば、振る舞うもなにもそれ以前に、一も二もなく三十六計逃げるに如かず、となるのだが、役割上どうしても応対せねばならないとなれば、雨降れば傘差すのと同じこと、雨滴を軽やかかわすみたいに、事なかれのバリアを張って、その場をしのぐということになる。

よほどの優勢でない限り強面に強面で応じるのは賢明ではないだろう。
火に油を注ぐようなものであって、相手もひけず、こちらもひけずとなって、無為にややこしい事態を招き寄せてしまいかねない。

実のところ大半の強面は、心優しい本性をひた隠しにしているか、あるいは、いびつな虚勢を生きるよすがとしている、いわばなんちゃって強面に過ぎないのだが、いちいち現場でその本質を検証する猶予はないので、逃げるが勝ちというとおり、通り一遍の対応で済ますのが合理的であり経済的であり、第一に、身のためということになる。

雨降れば、心穏やか優雅に傘差し、雨を避けるだけのこと。
雨には雨の事情がある。
雨の向こうを張っても始まらない。

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