KORANIKATARU

子らに語る時々日記

巨大人口を御するための危機管理

あの数の人間を統制するには、罰金で縛るのが一番なのだろう。
上海では、レストランやホテルなど公共性ある屋内空間は例外なく禁煙であり、市街地内部でのクラクションも禁じられていた。

百聞は一見に如かず。
実際に建物内で喫煙する人を目にすることはなかったし、クラクションの音を耳にしたのも一度切りだった。

このように、お達し一つで国際都市としての上海の顔立ちが急速に整っていく。

その一方、街なかでは路上に腰掛けゲームに興じる人を多く見かけた。
彼の国は著作権に関して無法地帯。

なんでもダウンロードできコピーでき、ゲームはし放題、映画もドラマもアニメも見放題、音楽は聞き放題。

おそらくここにもお上の思惑が絡んでいる。
巨大な数の人間を統治するにはガス抜きとなるサーカスが必要だ。

貧しい者もタダで娯楽にありつけ、ドラマやアニメを見ることで辛いこと悲しいことが楽しい時間に置き換わっていく。
毎日が楽しくさえあり、日頃の鬱憤も晴れていく。

統治する側にとってこんな安上がりな危機管理はない。

他国が産出する娯楽がひとりでに流通し、庶民が抱きかねない政治への疑義が消散されていく。
お上からすれば願ったり叶ったりというものだろう。

そしてお上の思惑に沿って、思考や感情がコントロールされていくが、渦中にあるとなかなかそのメカニズムに気付くことができない。

翻って日本。
放っておけば、お上が帯びる性質はどこだって同じであり、歴史を通じて変わらない。

わたしたちだって、テレビ見て手を叩いて大笑いしている場合ではないのかもしれない。

権力の優越意識を通して見れば、庶民は愚民。

ご機嫌麗しい愚民の姿に目を細めるのがお上の本質といっていいだろう。
庶民として、そのしたり顔を見透かすくらいの見識は意地でも保っていたいものである。

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© Masakata Matsumura, The Bund, Shanghai.