KORANIKATARU

子らに語る時々日記

恐怖の主君

ツバメ君の友人は大阪府警の警察官だ。
このところ、応援で九州に駆けつけることが多いという。

九州で勢力誇り人々を恐怖に陥れてきた暴力団の撲滅に福岡県警が動き始めたのは数年前のこと。
当時その陣頭に立っていたのは星光のOBであった。
いまその方は大阪府警の本部長の地位にある。

不祥事などがあった際に揶揄されることも少なくない警察であるが、その警察によって安心安全な暮らしが保たれていることも知っておかねばならないだろう。

数年前の話である。

恐怖に支配されたような会社があった。
会社の上層部が組み敷かれ、事実上、反社会勢力が支配する構造となっていた。

恐怖は伝染する。
ある者が恐怖すれば、同僚も恐怖することになる。
恐怖に集団感染した群れを統制するのはプロにとって容易い。

更には恐怖の伝説化があった。
まことしやかに、あんな目に遭った人間がいる、こんな酷い目に晒された人がいる、といった話が口の端に上った。

まさに思う壺、我が世の春。
恐怖の神話の主君は勢いづいて理不尽に振るまい詭弁を弄し支配の愉悦に浸った。

たった一人、恐怖しない者があった。
面と向かって主君に逆らい、鼻で笑った。

もちろんこれは軽はずみかもしれないリスキーな態度であった。
殺されるのでは、と周囲は竦み上がった。

一種のチキンレースだったのかもしれない。
彼を殺せば支配の構造は強まったかもしれないが、一方でお縄となるリスクも無視できない。

彼は警察に相談に行き万全を期していた。
警察に行けば、恐怖の催眠が解ける。
運悪く相談に乗ってくれなければ、違う人に当たればいい。

結局彼は殺されることなく、そして主君の神通力は一気に失せた。
王様は裸だったのかもしれない。

会社は瓦解した。
当時、恐怖し身を竦めていた彼らは、今では自由の空気を胸いっぱい吸い込み平穏に暮らしている。
憑き物が取れた後になっては、一体何を恐れていたのか、定かには思い出せない。
まさに感冒のようなものであった。

彼らは解放されたが、いまもどこかで誰かが、恐怖し、身を震わせている。
戦闘を生きる糧としない丸腰の市民にとっては、太刀打ちできるような相手ではない。

警察あってこそ民主的で平和な社会が実現できる。
ますますの健闘を祈りたい。

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