1
事務所を起点にし夕刻間近の街を連れ立ってジョギングする。
先日、長男の学校で高校課程の指導方針について説明会があった。
その内容について話が尽きない。
ふむふむとその報告を聞きつつ頷き、西日を背に大阪市内を中心部に向け走る。
これまでと同様、前倒しのカリキュラムを推し進め現役での大学合格が果たせるよう学校が万全の態勢で後押ししていく。
入試制度改革も控えている。
当初から浪人期間を織り込んでといった悠長な構えは徒となりかねない。
現役合格、と目標を鮮明にし意気込む姿勢が頼もしい。
先般、センター試験が実施された日、現在留学中の海外組60余名を除く現中3が河合塾主催のチャレンジセンター試験というものを受けたという。
本番と同じ問題を本番同様の臨場感のなか英数国とこなす試験だ。
なかなかの好結果であったらしい。
現時点で世間の高2水準には優に達しているとのことである。
学力増進計画は順調に進捗しているようである。
また、高校からの編入生についても猛者強者揃いであるという。
切磋琢磨し相乗効果で互い伸ばし合うことになるのだろう。
2
走り終えサウナで汗を流す。
花を買って寿司桶を抱えクルマに向かう。
夕闇迫る街に強く風が吹く。
四国で春一番が吹いたというニュースを耳にしていたので、気のせいか、風に南国の匂いが混ざっているように感じる。
帰宅し、二男の前に座る。
ビデオでフル・モンティを観た、面白かった。
そのような二男の話から会話が始まった。
日記でフル・モンティと検索するとちょうど昨年の今頃、長男もフル・モンティを見ていた。
画面に食い入り、見終えた後、満足気に余韻にひたる長男の様子がつい昨日のことのように思い浮かぶ。
食事の支度が整い、話題は学校の話へと移る。
先日高校入試があったという。
四人受験したが合格者はなかった。
内部生の数学がかなりハイレベルな域に達しており、それに伍する外部生はそうそうない。
そのような話を以前から耳にしてはいた。
受験者数が一桁となるような状況で一体全体、高校入試を行う意味などあるのだろうか。
そのような疑問も生じるが、何か高校入試を実施しなければならないような制度的な事情などがあるのかもしれない。
3
食事しつつ音楽をかける。
まずは時事ニュースがてら山陽新幹線新神戸駅などの発車予告音に採用された「銀河鉄道999」。
わたしが小学生だった頃に大ヒットし、いまなお褪せることない名曲だ。
あと二曲だけだからと二男に断り次の曲を流す。
「ハチのムサシは死んだのさ」。
ついこの間、ラジオで流れ心から離れずダウンロードしたものであった。
高揚感たっぷりでかつ掴みどころのない曲調に、二男は戸惑っている風に見える。
なにこれ、といった顔をしている。
そしてあと一曲、これがラスト。
世界歌謡祭でのグランプリ、不朽の名曲とも言える「ナオミの歌」。
ハチのムサシで耳慣らしはできていた。
出だしから息つかせぬノリであって、そのいきなりの盛り上がりのサビの段階から掴みはオッケー、二男は大いに気に入ったようであった。
70年台終盤から70年序盤までを遡っての名曲3曲を二男の耳に馴染ませることに成功した。
千曲知っている、という域までは道半ばにも至っていない。
夕食時の懐メロシリーズはこれからも続くことになる。
4
あとはランダムに洋楽がリビングに流れ続ける。
そうこうしているうちに夜の9時。
まもなく彼の地に日が昇る。
いましがたの夕刻、目にしたばかりのお日様によって、長男の街が照らされる。
メールを送るとすぐに返信があった。
クラスの仲間と映画を見に行ったときの写真が添えられている。
賑やか打ち解けた様子にこちらまで楽しくなってくる。
そのとき、デビー・ギブソンの曲が流れ始めた。
何十年前、中野区野方の303号室で一人耳にした懐かしの曲だ。
なんだかとてもジンと来る。
当時のワンルームの詫びしい一室が、ここへと繋がっていたのだと、不思議な思いが込み上がってくる。
様々な曲にのってこの先ももっといい場所へと運ばれていく、そのような予感を覚えつつ、一人ご満悦となって残すところわずかとなった週末のひとときを慈しんだ。