JRの電車に遅れが生じ、この日もまたホームが人で溢れかえっていた。
迷うことなく引き返し阪神電車の駅に向かった。
急行に乗って10分。
地元の駅に着き、そこからバスでまた10分。
少し歩いて無事家に到着した。
食事の用意は整っていた。
つきだしは枝豆。
続いて、大根おろしがふんだんに添えられた秋刀魚の塩焼き。
メインはベトナム風春巻き。
なかに野菜がたっぷり入り、しそが生ハムの味を引き立てた。
腹八分目では少しさみしく、一品所望すると、ネギがたっぷり刻まれた納豆に卵が投下された。
そしてデザートはトマトの切り身の入ったもずく。
マニアックなほどにヘルシーなメニューと言えた。
もし外食せず家で出されるものだけ食べて過ごせば、わたしは絵に描いたような健康体になることだろう。
翌朝が早かったので子らの帰りを待たず横になった。
そのまま朝まで安眠といきたかったが、頭痛があって目が覚めた。
リビングに降り家内にその旨伝えると、ヘッドマッサをしてくれるという。
それでソファに寝転んだ。
書類屋は肩から上で踏ん張っている。
軽く仕事こなした一日であっても、首筋を発信源に思った以上に凝りが周囲に伝播している。
それに加え、要所要所で歯を食いしばるからだろう。
側頭部にも疲労が蓄積している。
家内は心得たものである。
滞りのある箇所に適確にアロマを塗布し、周辺部含めてもみほぐしていく。
震源地とも言えるような箇所については痛みを感じるが、すべて預けて耐え凌ぐ。
特に耳がよく効く。
耳は全身と直結する反射区として知られている。
耳のツボが起点となり、張り巡らされた路線のように神経が行き渡って各所につながる。
だから耳のツボを押すと胃がグーとなり、鼻がスーとなり、カラスがカーと鳴く。
半時間の施術で頭部の反乱は鎮圧された。
肩から上が楽になると、心も癒えて睡眠がとても快適なものになる。
家に最強のパーソナル・トレーナーが控えているようなものである。
この内助の功があってこそ。
すべて納得するような思いとなった。