息子の夜食は骨付き鶏もも肉と三輪そうめん。
先日の朝日新聞に素麺の話題があった。
遣唐使がもたらした食べ物が原型で、遡ること千二百年前、大神神社で神からお告げがありそのとおりに作ったところ素麺が出来上がった。
この三輪そうめんが元祖となり、江戸時代のお伊勢ブームに乗って素麺が全国に広がっていった。
揖保乃糸、小豆島そうめん、五色そうめん、島原そうめん、五島そうめん、半田そうめん等々、どれも美味いが、元を辿れば三輪に行き着いて、その先は神。
そう息子に説明しつつ三輪そうめんのご利益を説いた。
深夜になろうとする時間。
家内はいつにも増して快調。
夕刻、帰りに一緒に全身マッサを受けた。
その効果がずっと持続していた。
この日、家内を施術してくれたセラピストが手技の巧者。
わたしも一度マッサージをしてもらったことがあった。
スポーツ整体あがりの人でアプローチが一風変わっている。
それが新鮮で意外性がありとても気持ち良かったのをよく憶えている。
わたしはおばさんセラピストの腕力に身を任せつつ、思った。
いま家内は隣で夢見心地。
そう思うと、おばさんの容赦ない突きや捻りによる痛みが和らぎ、痛みの合間に感じる気持ちよさが倍加していった。
わたしも家内もかなり疲れていたのだろう。
身体のコンディションが60分の施術を受けて様変わりした。
生きてて良かった。
そう実感する心地よさであったから、帰途、互い笑顔が絶えず、家でも終始笑って過ごすことができた。
息子はそんな笑い顔の夫婦のもとへと帰宅して、素麺談義を聞かされたのであった。
モンキーマジック、とタケカワユキヒデの手から放射状に発せられる蜘蛛の糸のごとく。
すする先から息子の頭の中、素麺が四方八方に広がって、この夜、彼にとって素麺は間違いなく神域に属す特別な食べものとなった。