金曜夕刻、環状線に乗って実家に向かった。
突然の来訪だったから父母は驚いた風であった。
いつも月末には寄るようしているがこのところ忙しく延ばし延ばしになっていた。
父は晩酌の相手ができて嬉しそうだった。
こんなわたしでも顔を出して喜んでくれる場所がある。
だから当然わたしも嬉しい。
元気そうで何より。
ずっと長生きしてください。
心の中で思うことはいつも同じであった。
母があれこれと料理を作ってくれる。
すべて昔馴染みの味。
父と飲み交わすお酒が進んだ。
母が疲れぬよう頃合いを見計らってわたしは腰を上げた。
帰途、一杯飲み屋に寄って風呂に入った。
帰宅すると家はピカピカだった。
月一回やってくる掃除屋さんは家をきれいにしてくれて面白いみやげ話をいくつも置いて帰る。
家内が楽しげに話してくれる。
耳を傾けていると門の開く音がした。
家内が押し黙った。
二男はすでに帰って来ている。
いったい誰だ。
わたしは階下に駆け下りた。
現れたのは長男だった。
毎回決まって何も言わず何の前触れもなく帰ってくる。
家内はひさびさの対面を喜び、腹が減ってるはずだと勝手に決め込み料理を作りはじめ、わたしはお酒を用意した。
明日は京都、明後日は明石、肉を食べよう寿司も食べよう。
夫婦で大はしゃぎしあれこれ計画を立て、息子の予定を勝手に決めていった。
盆と正月には家族が揃う。
息子を東京にやってはじめて、わたしたちはその喜びを知った。