洲本のイタリアンが予約できなかったので、そのままクルマを南へと走らせた。
どうせなら知らない街まで行ってみよう。
そう持ちかけると、助手席に座る家内も同意した。
先月は徳島を訪れた。
だから順番で言うと、今回は香川。
知らぬ街巡りの行き先は即座に決まった。
家内のリサーチが始まって、香川では骨付鶏が名物なのだという情報が寄せられた。
一同異議なく、昼は鶏と相成った。
骨付鶏一鶴屋島店は昼を前にほぼ満席だった。
香川の人にとり骨付鶏は日常の食材なのだった。
おやどり、ひなどりを「バラシ」で頼み家内と分けた。
一口食べて気に入って息子の分をみやげに頼んだ。
そして、そこから歩いて5分の場所。
わら家の列に並んで、生まれて初めて香川のうどんを口にした。
家内と感想は同じ。
うどんはうどん。
どこで食べてもうどんはうどんなのだと、うどん県にてわたしたちは学んだ。
そこからクルマで屋島ドライブウェイを走り、瀬戸内の海を吹き渡る風に吹かれて一帯の景観に見惚れて過ごした。
山上を家内と歩いて身に沁みた。
事務所の空気にばかり触れているとカラダに障る。
たまに心も換気が必要。
全身の窓を全開にし、潮の香、緑、土の匂い、秋の気配など入り混じったかぐわしい空気をわたしたちはたらふくカラダに取り込んだ。
続いて高松。
旅すれば駅と商店街が外せない。
街の雰囲気がそこに凝縮されている。
用もなく高松サンポートビルの30階まであがって景色をみて、市街地をぶらり歩いた。
帰途は食材調達。
屋島のマルナカに寄りオリーブで育てたというハマチや地鶏、そしてフルーツ類を買い込んだ。
買物を終え駐車場内を走っていると、道行く人がみなわたしたちのクルマを指差した。
何か異変かと思ってクルマを停めて外に出た。
クルマのルーフの上に一房のシャインマスカット。
荷物が多すぎドアを開ける際、家内はルーフの上にシャインマスカットを置いた。
そしてそれをそのままにわたしはクルマを走らせていたのだった。
ちょっとした髪飾りのようなもの。
そんなめかしこんだクルマは珍しく、目にした途端、目が点になって指差すのも当然という話だった。
時刻は午後4時。
家内と笑ってシャインマスカットを食べながら香川を後にした。
歌ったり居眠りしたりする家内を助手席に乗せ約3時間、帰途も平和で楽しいドライブになった。