昨年の夏は長男。
今年の夏は二男を連れて京都に向かった。
まずは開店と同時、「にし田」を訪れた。
すでに幾組もの客が順番を待っていた。
ありふれた佇まいに見えて人を魅了してやまない。
他とは一線を画す店であると、ひと目で二男にも理解できたに違いなかった。
期するものがあるのだろう。
誰がどんな肉をどれくらいの分量買っていくのか。
彼は売り場をじっと注視していた。
京大の友人らと肉を焼くとなれば、ここで調達することになるはずである。
わたしたちの買い方はいつものとおり。
赤身は各種500グラムずつで、白身は300グラムずつ。
肉とコンビニで買ってあった氷袋を多層に重ね、保冷バッグ2つに詰め込んだ。
京都の夏でもこれで万全。
せっかく上洛したのであるから観光も外せない。
続いては数ある観光名所のうち清水寺へと向かった。
人もまばらな坂道を各所での景観に見入りながらぶらり歩いて、互いiPhoneを向けて写真を撮り合った。
息子らとここを訪れたのは10年以上も昔のことになる。
比較対照のスパンが長いから、その成長ぶりがより一層鮮明になった。
つづら折りの上り坂を駆け上がっていたちびっ子当時の姿が眼前に浮かぶ。
一足ごと胸の内の感慨は深まるばかりだった。
清水寺から八坂神社へと下り、祇園の商店街を歩く頃には昼となった。
鴨川を越したところが先斗町で、小道に入ってすぐの場所。
予約してあった「李河南」のカウンター席に並んで座った。
いつか息子に食べさせたい。
家内と来る度、そう話し合ってきた。
そんな小さな願いが実現した瞬間だった。
韓国料理の粋を極めた品々に二男も感心しきりだった。
彼もまた誰かいい人を連れ再訪するに違いない。
前回は冷麺で締めたので、今回はビビン麺を最後に頼んだ。
ほどよい辛味が癖になる。
思い出した頃、わたしたちはまたここまで足を運ぶことになるだろう。
そして、食後はかき氷。
その足で「とらや本店」を目指した。
はじめてここに来たのは、長男が小4で二男が小2になったばかりの頃のことだった。
店舗の庭園側に水場があって、かき氷などには目もくれず、二人の息子は突進していった。
まるで珍獣が闖入したようなもの。
甘味とともに心静かに時を味わう他の客たちは度肝を抜かれ、家内は慌てふためき、わたしはそんな二人に目を細めた。
当時を懐かしみつつ、二男を真ん中に夫婦で思い出話にひとときふけった。
庭園を吹き渡る風が心地よく、屋外であってもここだけは真夏の火照りから遠く隔てられていた。
まもなく8月が終わる。
夏らしい過ごし方がひとかけらもない夏となるのは口惜しい。
余熱残るうち夏を堪能しなければならないのではないだろうか。
氷でカラダが十分に冷えた頃、わたしたちの意見は固く一致した。