祝日にはこうあってほしいというような晴天。
初夏の陽気に誘われて、武庫川沿いを走った。
水流と土と木々の香りが相まって颯々と吹き渡る風が実に心地いい。
走ること自体の幸福にひたりつつ海へと向かい、いつしか頭に二男のことが浮かんだ。
わたしには根性がない。
だからきつい練習には耐えられない。
考えただけで嫌になる。
練習は厳しいが友だちがいるから励みになる。
二男はそう言った。
幸い大阪星光66期の友人が同じ部活にいる。
親としても心強い。
黒姫山荘で寝起きを共にし火打山に登り、南部学舎で過ごし熊野古道を一緒に歩いた。
中一から部活が同じで、力を合わせてチームを引っ張り、試合後は風呂に入って焼肉を食べ、うちに泊まった。
兄弟みたいな存在が、なんと奇遇なことだろう。
東京の地でもチームメイトになった。
親は黙って見守るだけのことであるが、さあ、どうなるのか。
目が離せない。
まもなく海というところ。
そこで折返し山側に向いた。
しばらく走ったところで、長男から写メが届いた。
大使主催のウェルカムランチの招待状であった。
緊急事態宣言明け、ホテルのレストランで行われる。
今度は長男について思いを巡らせた。
わたしなど引っ込み思案。
募集もないのに応募するなど思いもつかない。
まして、断られつづけるなか、それでも前を向くなどあり得ない。
大使館でインターンとして雇ってもらう。
そう思い立って、半ば飛び込みで門を叩き、「求めよさらば与えられん」を地で行った長男と、受け身で気弱なわたしは大違い。
生きた結果の差は激甚なものとなるに違いなく、その姿を見上げる日々は楽しみそのものと言える。
招待状をみて家内なら言うだろう。
同じ日、隣の席を予約してウェルカムランチの様子を見学しよう。
子らが幼児の頃と同じ発想。
兄弟をプール教室に通わせたとき、家内に連れられ、わたしたちはビジターとして隣のレーンで泳いだ。
家内を前に何往復もしながら、子らの泳ぎを注視した。
そんなバカ親は子らが大学生にもなって健在で、チャンスがあれば同じことをしようとする。
子らにとっては迷惑な話かもしれないが、目が離せないのであるから仕方がない。
武庫川は、日常の街並みとは一線を画すほど色鮮やかに輝いて見えた。
季節感たっぷり、移り変わる色彩のなか走って、しまいには恍惚。
こんなに気分のいいものはない。
たまには走ろう。
そう思った。