前夜飲みすぎた。
お酒がカラダにかける過負荷を実感しつつ、それを跳ね除け早朝から始動した。
自室にて業務にかかり、この日は土曜日、一段落した頃合いこの身を解き放った。
今年一番の冷え込みだった。
身を切る寒さであったから、日の当たる場所を選んで歩き武庫川に向かった。
武庫川では全方位から太陽の光が降り注いでいた。
冷気と陽気がミックスされて、こんな爽快にひたれば生きることはただただ喜び、そう感じられた。
走り終え、家内と共に電車に乗って神戸を訪れた。
三宮で降り北野坂に差し掛かるとそこに「北野坂木下」がある。
数あるイタリアンのなかぶっちぎりの人気店と言っていいだろう。
前回訪れたのは7月31日。
四ヶ月ぶりの再訪となった。
この日もやはり出だしから素晴らしく、ずっと最後まで夫婦揃って感嘆し通しとなった。
一体どうすればこんなスープが作れ、やわらかく旨味たっぷりの肉が焼け、パスタもリゾットもほんとうにほっぺが落ちるのが心配になるくらい美味しくできて、数々のカニや白子や牡蠣や河豚など食材が数倍の美味の品に生まれ変わるのだろう。
これはもう秘技というレベルを超えて魔術と言うほかない。
なにも大げさに言ってる訳ではなく、その証拠、訪れた際に手を挙げねば次の予約がもう取れないという店になってしまった。
わたしたちの次の予約は来年4月。
新緑の季節にまたこの奇蹟の数々を夫婦で目の当たりにすることになる。
店を出て、家内と話す。
いやあ、すごかったね。
そして話は奇跡の人を巡ることになった。
例えば先日家内のカットを見事に決めた美容師、家内が毎月通うヘッドスパなど。
その気になっても予約が取れない。
見渡せば様々な分野に人を魅了してやまない突き抜けた逸材が存在している。
そんな名人との出会いは実り多くて幸に富み、そこに着眼すれば、人生はなんて素晴らしいのだろうととても前向きな気持ちになる。
そういう意味で奇跡の人は、取り合いにはなるけれど、世の幸福に多大な貢献をしていると言えるだろう。
稀有な境地を切り拓いた目に見えぬ研鑽に、心から感謝したいような気持ちになる。