クルマで京都市内に入って驚いた。
まさに全国から集結といった感じで、ナンバープレートが記す土地が多岐にわたっていた。
札幌から佐世保まで至る所から人々が上洛しているのだった。
駐車場はどこも満杯だった。
が、ぐるぐる回っていると八坂神社近くにたまたま空きが出て、無事そこにクルマを停めることができた。
明日の帰阪までクルマは不要。
あとは身軽に京都の街を歩くだけのことだった。
高瀬川沿いを歩き、ホテルへと向かった。
昼間はいろいろな店が息を潜めるように街の風景のなかに溶け込んでいる。
夜になると百花繚乱。
赤い花から黒い花まで各種各様の店が花開く。
市中に泊まったからこそ、夜の様変わりを知ることができた。
最上階となる8階がフロントで、部屋は7階だった。
荷物を置いて、ワインなどがフリーで飲めるというから3階のラウンジに向かった。
夕飯までの時間をそこでのんびりくつろいで過ごしてから街に出た。
まずは食べログの点の高い食堂おがわとその姉妹店である食堂みやざきを訪ねてみた。
食堂おがわの店員さんは丁寧に教えてくれた。
店に来てもらったときにたまたま予約にキャンセルが出れば入ることができる、席にありつけるかはその時の運次第。
食堂みやざきの店員さんは、素っ気なかった。
予約はオーナーひとりで管理していて分からない、ここで予約したいと言われても対応のしようがない。
話を総合すれば、要は一見さんお断りと、京都らしい話法で伝えていたのかもしれなかった。
京都の意地悪は奥が深いとしばしば耳にする。
これがそうなのかと貴重な機会を得たみたいに夫婦で感心し合った。
通りを歩き、物珍しい店があって家内が足を止めた。
店の名は「肉なべ千葉」
すでに列ができていたが、めげずダメ元で家内が店の人に聞いてみた。
なんと運良く、カウンター席の二席に空きが出たばかりだった。
ほんとうに美味しく、切り盛りする店長の人柄がよく、「肉なべ」はここでしか味わえないというから、わたしたちはついていた。
いつか息子らを連れて再訪しよう。
そう思える店は数少ない。
ホテルに戻って、オープンテラスにてまた一休みした。
真上に上弦の月、すぐとなりに木星が輝いて、眼前には暖炉があってとても気分が安らいだ。
と、息子からメッセージが届いた。
鴨川を挟んで目と鼻の先の場所で食事しているようであった。
合流を呼びかけ、返信を待った。
答えはノー。
だから夫婦二人で二次会へと繰り出した。
夜になってわんさか人通りが増していた。
物騒と感じるほどであった。
そこではじめてわたしたちは木屋町という町の驚異的な人の集積力を思い知った。
渦とも言える人波をかき分け、たまたま空きのあった店で小腹を埋めた。
深夜にかけ人の出は増えるばかりで、その活気はわたしたちが知る盛り場のどれをもはるかに上回っていた。
この日上洛したすべての人がここに集まっているのかもしれなかった。
人の顔にナンバープレートが貼っつけてあれば、その多彩は壮観だったに違いない。