単発の業務があってこの日家内を伴い東京へと赴いた。
家内は早朝から起き出し息子に差し入れる弁当をこしらえ、そのついで車中でわたしが食べる朝食も作ってくれた。
ただわたしのは息子の弁当に比べ格落ちもいいところで、松竹梅で言えば松と苔くらいの差があった。
わたしが客先を訪問している間、家内は息子たちに届ける食料を携えそれぞれの下宿先を回った。
夕刻、宿のある虎ノ門ヒルズで待ち合わせてチェックインした。
わたしは部屋で業務に勤しみ、家内はホテル内を探訪して歩いた。
午後6時になって階下のバーで合流し一杯飲んでからタクシーで麻布台ヒルズへと向かった。
快適な空間にて夫婦で向き合って食事し、店の名がダイニング33だったからだろうか、わたしは中高の同級生である33期について語り、天六のいんちょの話をし、ときおり黙って東京タワーに目をやった。
食後は周辺を散策した。
日中は春を思わせる陽気に恵まれた東京だったが、天気予報が告げるとおり寒波が迫って風が冷たさを増していた。
だからおのずと二次会の店はおでん屋になった。
明日の予定について話し合い、その目鼻が立ったところでホテルへと戻り、東京タワーの消灯を見届けいつしか寝入った。