夜になって冷え込んだ。
JR吹田駅は出口が多く、「駅で会おう」と約束しただけでは行き違う。
寒風に身を縮ませながら辺りを見回し、「イオンと王将のある広場にいる」とのメッセージを受けようやくどこへ行けばいいのか見当がついた。
暖を取ろうとイオン店内を横切って広場に出た。
夜であれ遠くからであれ、そのでかいカラダは簡単に視認できる。
広場の中央付近、周囲を見渡しているのは天六のいんちょに他ならなかった。
やあ、と合流し商店街を進んでまもなく。
ここはうまい。
以前からそう耳にしていた「鮨こにし」に到着した。
カウンターに並んで座って、交わすのはいつものとおり家族の話だった。
子どもたちの送迎でここ最近は夜の時間が過ぎていく。
天六のいんちょはそう言った。
懐かしい。
かつてはうちもそうだった。
わたしは息子たちと過ごした車内での一コマ一コマを思い出していた。
その時間は濃密だった。
水泳教室にフットサルにラグビーに塾にと、送り迎えする道中、その時期ごとに特色づけられたあれやこれやについて言葉をかわし、車内だと不思議なことに会話が自然と心開いたものとなり親密さがいつも以上に増した。
深く心に残るそれら場面場面は些細であっても大切な思い出で、思い起こせば愛おしい。
話を聞いて、子どもたちと現在進行でとてもいい時間を過ごせている天六のいんちょが羨ましくなった。
車内で過ごす時間について話していたからだろう。
寿司屋のカウンターまでそんな親密感に満ち溢れはじめたように感じられた。
もちろん噂に違わず寿司はおいしく、大将が確かな腕をふるって女将さんが愛想よくて甲斐甲斐しく、居心地の良さを最上なものにしてくれた。
だから、次へ行こうとなるのも自然な流れで、わたしたちは天六にあるバーの名店Bambiへと移動し、そこでサガラさんが合流し、続いてカネちゃんも姿を見せた。
一体となった親密な空間は、自ずと次の根城を求めて動く。
続いて北新地へと移動して、そこでまた親密な空間は更に濃密なものになっていくのだった。
しかしさすがに午前様となってお開きとなった。
三々五々タクシーを求めてわかれ、北新地の路上をわたしはひとりで歩いたが、寒さなどとっくの昔に引っ込んでいた。
友だちがいるというのは、幾つになってもいいものである。
そうしみじみと感じながらわたしは天下一品の濃厚なラーメンをゆっくり味わい噛み締めた。