KORANIKATARU

子らに語る時々日記

手間と時間を惜しまない新たな試み


堺筋本町から西へ歩いて5分ほど。
相良さんが立ち止まった。
右手に路地の入り口が見える。

街中に忽然と口を広げた洞穴のごとく、その異様に一同がたじろぐ。

相良さんの背を追って恐る恐るトンネルのような暗く細い道を進む。
そこが冥界に続いていたのだとしても誰も不思議とは思わなかったであろう。

炉ばた焼ワコーはその路地の先にあった。


目の前に野ざらし置かれた魚介や肉を囲むようにして腰掛ける。
食材を指差せばそれが即座その場で焼かれて酒のあてとなる。

ビールで乾杯する。
最初に出されたのが刺し身の盛り合わせ。
軽くあぶったカツオが美味い。

いま本町にいるというのが嘘のよう。
どこか日常を離れた異空間にあるようで、おのずと会話が稠密となっていく。


手間と時間を惜しまない。
わしお耳鼻咽喉科が大事とする在り方について話し合う。
西宮北口近く瓦林の地で開院し来年11月11日で5年目を迎える。

その節目に向け医院の役割を再定義し、来院者に喜ばれ更に有用となる在り方を目指す。

例えば医療にまつわる情報提供のための準備が為されている。
耳鼻咽喉科が取り扱う内容について詳しい情報が欲しい。
そういった声が医院に数々寄せられた。
具現するため院長が診療の空き時間に各所へと足を運ぶこととなった。

いま実現へと向かい始めている。

心温かとなるような分かり易いビジュアルの数々は多く来院者の目を和ませ、かつ、ゆっくりと時間をかけてその知見を高めるツールとなっていく。


花粉症とは?、インフルエンザとは?
風邪とはそもそもどういうものなのか?
アレルギーとは?

そのような根本的な話についてテーマごと情報が発信されることになる。

それらによって、耳鼻咽喉と書けば字数複雑でかえって不分明となる診療対象や各部位で起こり得る症状について理解が進む。

その他、クスリを安易に使う対処療法が本当にいいことなのかどうか、苦くても副作用少ない漢方薬を使った方が適切である場合もあるのではないか、そのようなクスリの功罪についても知ることができる。

それに加え、クスリを使ってやみくもに咳を止めるよう処置すればかえって咳の症状が長引いたり、乳幼児に抗生物質を投与すれば長じて後アレルギーを引き起こしやすくなるといった意外な事実についても知識を得ることができるようになっていく。

路地に吹き込む冷気など何のその、男三人がっしりと身を寄せ炉ばたをつつく。
夜は更けるが、話は尽きない。

長く時間をかけて手間を惜しまず、果たすべき役割に真正面から取り組んでいこうとする鷲尾耳鼻咽喉科の試みは必ずや実を結び地域に大きな益をもたらすこととなるだろう。

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