KORANIKATARU

子らに語る時々日記

習慣づくりの谷

昨夜本を読んでいると横に二男がやってきた。
何の本?と聞くので背表紙を見せた。
「人生を変える習慣のつくり方(原題:Better Than Before)」。

電車の車内広告で見かけて本書について彼も少しは知っているようだった。
興味示して内容について聞いてきた。
おもしろい?

非常に重要なことが書いてあって面白い。
一言でいえば、人間は習慣によって形作られる産物、だという話である。

そう言ってわたしは、作者がヴァージニア・ウルフの言葉を引用している箇所を二男に見せた。
「時の流れが人の顔つきを変えるように、習慣が人生の顔つきを変える」。

この一行に本書の主題が凝縮されている。

複雑怪奇に見えて日常の構成はシンプルだ。
そのシンプルな日常をどう過ごすかで未来が大きく変わる。

良い未来を切り開こうと意志したところで、意志は案外非力であってあまり当てにならない。
重きをなすのは何気ない習慣の方であって、習慣こそが未来の扉を開くキーになる。

「意志というアクセルを踏む必要はない。習慣がとる舵に委ねればいい」という作者の言葉を二男に見せて話を続ける。

しかしそれほど重要なことなのに、日常に埋没しすぎるからか人は自らの習慣について考えることが少ない。
だから、このような本が良い契機となってタメになる。

習慣を考えることは自分自身を知ることである。
また習慣について理解を深めることが、自分自身にとって最も好ましい在り方の発見にもつながる。

本書によってそう気付かされ、習慣を定着化させるためのノウハウも満載なので具体的な指針も数々得られることになる。

本書が売れるのも頷ける。
習慣という切り口で日常を捉え直すことができ、自身についての理解が深まり、それに加えて具体的な助言でもって良き明日へと背中も押してくれる。
三位一体の実用性を兼ね備えた名著と言えるだろう。

読了後には習慣という視点が備わって、あらゆる事柄を習慣というアングルで捉えられるようになる。

例えば君が通う学校自体もいわば「習慣づくり」の場所であるという見方ができる。
いまの君は知らず知らずの職人芸で良き習慣を彫り込まれている真っ最中だということになる。
先々になって分かることだが、その習慣は長きに渡って威力を発揮する。

次の日の朝練に備えて二男は早めに寝る必要があった。
そこまで話して父子団欒の時間をお開きとした。

そして、とき折しも、関西私学の中学入試前日。
学校は世に出る前のかけがえのない「習慣づくりの谷」とも言える場所。
みなが良き出合いに恵まれますように。
日本列島を覆い尽くす激烈な寒波が過ぎれば、眼前には生涯心に残る学び舎が光帯びて姿を現す。
まもなく桜咲く春である。