逃げてもまた巡ってくる。
長く仕事していれば誰だって思い当たることだろう。
相談コーナーの長机に腰掛けて、相談者があれば対応する。
どんな話が降ってくるのか、その場にならないと分からない。
報酬にしても行って座って話して帰ってという時間を考えれば割のいいようなものではない。
だからそういった類の業務は避けてきた。
が、今回ばかりはお得意さまからのたっての指名。
とっさのことではぐらかしようがなく、なんということだろう二つ返事で引き受けてしまった。
いつか通らねばならない道は、いつか通ることになる、この同語反復から何人も逃れることはできないのだった。
だからやむなし。
そうなれば認識を変えて、気持ちを高めるしかない。
総勢二百社の方々と出合って打ち解け対話しお見知り置きいただく貴重な機会。
わたしにとって多大な学びを得る実地の社会見学のようなものであってデスクワークしているよりよほど意義深い。
知らないことを質問されて間の悪い空気となりやしないかという一抹の不安は感じるが、過去振り返ってみればそんな事態に陥ったことは一度もない。
相手が抱える問題についてキーとなるポイントを理解し頭フル回転させ解までの道筋を見い出そうとする、その姿勢が重要であり、小さな事柄を事細かに知っていたところで、だから何なのだという話にしかならない。
いくら物知りであってもそれが理由で導出した解に信頼を寄せられたり、期待を持たれたりする訳ではないのである。
だから極端に言えば、もっとも大事なことにアプローチできるなら資格などなくても構わないということになる。
現実の切った張ったのなか小手先目先の知識などあまり役に立たないようなものなのだ。
風呂上がりに湯冷めしたのだろう。
昨日から風邪気味で体調思わしくない。
空はまだ明るいが今日は早めに切り上げることにする。
最終の面談を終えクルマで客先を後にした。
なんだか空が広く明るく感じられ、記念に一枚ぱしゃりと撮った。