午前零時十分。
玄関の扉が開いた。
たまたま玄関付近にいた家内が驚いたような声をあげた。
この夜、長男は西大和の友人らと難波で集まり焼肉を食べた。
盛り上がって長引き帰宅は午前様となった。
そして、集まった友人のうちの二人が我が家にやってきたのだった。
何の前触れもなく真夜中に友人らが現れたのであるから家内が驚くのも無理はなかった。
昔からそう。
友人を連れてくるとき、息子は家内に事前連絡などすることが滅多にない。
そして毎回同じ。
即座、家内は来訪者を迎える態勢に入った。
日中、長男の服選びに付き合いりんくうアウトレットまでクルマ走らせた疲れなど微塵も感じさせなかった。
彼らを順々に風呂に入らせ、その間、寝床、着替えを準備し、彼らが着ていた着衣の洗濯までし始めた。
中1の頃からちょくちょく家に顔を出す常連メンバーであり気心も知れ、互い母とも仲がいいからある意味、息子同然と言えた。
ちなみに息子の友人は揃いも揃って全員が破格に優秀。
この夜現れた二人も例外ではなく、西大和の申し子とも呼ぶに相応しい存在と言えた。
明けて朝5時半。
二男の朝食と弁当の支度のため家内は起き出した。
前日の遅い時間、夜食として平らげた焼鳥丼は二男の腹のなかで完全に消化されきったようだった。
朝からベーグル2個を次々頬張り、ヨーグルトとマンゴーを食べ、ジョッキに入れたミルクに純ココアを溶かして飲み干した。
続いて家内は来訪者のための朝食の支度に取り掛かった。
ご飯なら焼鳥丼、パンならベーグルサンド。
友人らは思い思い好きなものを選んだ。
そして今日この日、家内の用事はこれだけでは済まないのだった。
洗濯し掃除し、昼からは星光ママらと集まって食事し、午後早い時間帯には帰宅しなければならない。
今夜長男が東京に戻る。
だから、持ち帰らせる肉を各種焼き、鮭を焼き、大量に作った特製梅ジュースをボトルに詰め、加えて新たな来訪者に備え準備を整える必要があった。
今夜、夕飯の時間をのりしろにして、長男と入れ違い。
別の友人がうちに泊まりに来ることになっている。
食後、長男は東京に帰り、関西を旅しているというその友人が入れ替わって我が家を根城にする。
西大和の子なら顔なじみだが、慶應法の子だというからわたしたちにとっては初対面となる。
気さくな女子で、長男いわく家内と絶対に気が合うはずとのことであるから、楽しみだ。
今夜のメニューに、おいしい刺身を添えるのはわたしの役目。
だから、市場の魚屋でいいところのネタを早めに注文しておかねばならない。
ふと思う。
子らが巣立ってもこんな感じで人の出入りは絶え間なく、だから先々も退屈することはないのだろう。