今夜はタコ焼き。
家内からそうメールが入った。
先日のお好み焼きに続き二男のリクエストがあって、ナニワB級グルメの真打ちが登場することになったのだった。
帰宅するとラグビー中継を横目に家内がキッチンでタコ焼き器と対峙していた。
対戦カードはイングランド対アメリカ。
その姿はまさにタコ焼き屋のお姉さん。
サマになっていた。
焼き上がった第一陣が、あいよってな感じで小皿に盛られ差し出される。
あとはセルフサービス。
ソース、マヨネーズをかけ青のりを振って、どこかの名産だというマグロ節をまぶした。
出汁が香ばしく外側パリッとし内側柔らかでタコの歯ごたえがアクセントになってかなりおいしい。
綺羅星のごとくタコ焼きの名店ひしめく大阪にあっても家内作は筆頭格の評価を得るだろう。
B級だって家内にかかればお茶の子さいさい。
お手のものなのだった。
タコ以外値の張るものはないから安上がりで手軽で美味しい。
栄養価はさておき実に優れた軽食と言え、食道楽大坂の地でタコ焼きが真打ちの座に永く留まる理由が腹で理解できた。
まもなく二男が帰ってきた。
髪を切ったとのことで珍しく早い時間だった。
二男の前にはタコ焼きの大皿が置かれた。
もちろんトッピングは全て家内によってなされた。
一口食べて彼の顔も綻んだ。
パクパクと口に放り込んで明日の朝もこれでと話が決まった。
ちょうどそのとき長男から写メが届いた。
ラグビー仲間と新大久保に繰り出しいま焼肉を食べているのだという。
遠くにあっても間近にいるようなもの。
みな元気で仲が良くて何よりである。
焼肉を頬張る日出ずる国の天子らに、タコ焼きうまいよと返信し、日没する国にお立ち寄りの際は賞味あれと言葉を添えた。
一夜明けて朝五時。
タコ焼きが小気味よく爆ぜ我が家の一日がはじまった。
焼き立てのタコ焼きに加えてササミのタタキとサラダが二男の朝食として供された。
朝練後の弁当は愛情たっぷり込められたオムライス。
それを携え一番電車で彼は学校へと向かった。
家内によってわたしもタコ焼きに開眼することになった。
朝にタコ焼きを食べるなど生まれてはじめてのことだった。
今後ナニワの街行けば、食の煩悩のアンテナがあちこちでビビッと反応し葛藤頻発すること必至だろう。

