事務所で一仕事し昼過ぎに帰宅すると、待ってましたとばかり家内にジムに連れられた。
筋トレ&有酸素で一時間以上精を出し、心地よい疲労にまどろんだ。
後はゆっくり。
そう思ってソファに寝転び「孤独のグルメ」を観ていると家内が言った。
3時からズームでヨガのレッスンがある。
一緒に受けてもらう。
ヨガなどまっぴらご免。
3時直前、隙を見てわたしは逃走した。
といっても行く場所は事務所しかない。
事務所に到着すると宅急便屋の姿が見えた。
受け取った荷物を見ると28 期松井先生からの陣中見舞いだった。
厚く御礼。
家内が腕を奮って今年もまた息子が喜ぶことになる。
「どこへ行ったのか」。
家内から再三届くメールに、食材買い出しと説明していた。
ヨガが終わる時間を見計らい、エコバッグ3つを持参し商店街へと繰り出した。
まずは魚屋たこや。
ノドグロがおすすめだという。
豆腐と一緒に炊いて食べればとろける。
大将がそう言うなら間違いない。
ノドグロ、ホタテ、ハモ、シャケ、ししゃもを買い求めた。
続いてビッグビーンズ。
真っ先に絹ごし豆腐を買い、家内が好きなプチトマト、パンチェッタ、プロシュートを買い、息子が飲む白バラコーヒーと牛乳を買い、日用の食材として卵を買った。
そして締めは川繁のうなぎ。
焼き上がったばかりの一尾を包んでもらった。
これで家内が喜ぶ。
重い荷を引っ提げ家に帰ると、思惑どおりヨガ逃走の件は不問に付され、楽しい夕餉の時間が始まった。
白ワインを開け食事していると、長男から電話がかかってきた。
送った荷物の礼であったが、あそうそうと、先日の話を彼に伝えてみた。
同級生女子らの雑談のなか、賢い男子の第一位として君の名が挙がったそうだよ。
大いに受けたようで息子は笑い、旧友の近況について語って聞かせてくれた。
同じ小学校から甲陽に進んだ友人は引き続き天才ぶりを発揮し現役で京大医学部に入った。
中学受験などには目もくれずサッカーばかりしていたあのイケメン君は中学も高校も公立に進み東京に越した後もサッカーに明け暮れ、かつ勉学も怠らず一橋大学の法学部に現役で進んだ。
この二人をさしおいて、賢いなどと言えばヘソで茶が沸く。
なるほど、確かにヘソで茶が沸くとわたしも同意した。
その他、昔、公園で一緒に遊んでいたうちの一人はいま海外のプロサッカーチームに所属し頑張っているし、もうひとりは陸上で鳴らし東京六大学のひとつに進んで大活躍している。
長男の話を聞いて真向かいの公園でサッカーに興じていた彼らチビッ子たちのかわいい姿が眼前に蘇った。
地元小学校の一学年は計60人。
うち男子は30人。
その数を思えばなかなかの人材輩出率と言えるのではないだろうか。
家内とそんな話をしていると、自主トレを終えてリビングに現れた二男も話に混ざった。
彼の学年のマッツンもイックンも公園仲間でありめちゃくちゃ賢く、イケメン君の弟は中学受験していないから定かではないがおそらく彼の兄より賢くマッツンやイックンに匹敵するくらいかもしれない。
いま連絡をとってないがもうすぐそれぞれの嬉しい近況が聞こえてくるだろう。
息子の夜食はサムギョプサル。
肉を次々と頬張る息子を見ていて思いつく。
交わりは消えてなくなるのが世の習いであるが、機会あるなら旧交は温めるべきであり、交差が多々復活すれば人生は更に豊かになるに違いない。
大学受験が終われば、かつてのチビッ子メンバーに声をかけ公園でサッカーし、その後うちで焼肉パーティーでもすればいいのではないか。
大きく成長した彼らが集まれば壮観だろう。
同じ地で育った幼馴染みの縁を根絶やしにしてはもったいない。
小学校と公園で取り結ばれたよしみのチビッ子たちの同窓会、ぜひ実現させようではないか。
家内も張り切るにちがいない。