業務の最終地点が天王寺。
仕事を終えて阿倍野正宗屋に向かった。
孤独な中年男子の憩いの場。
わたしはちょくちょく世話になっている。
カウンターに腰掛け定番を注文していった。
ビールを手酌でコップに注ぎ飲み干す。
孤独そのものといった姿であろうが、心のうちには家族がいる。
子らの写真を眺めつつ、だから、ワイワイやっているのも同然。
孤独であってまったく賑やか。
酔いが楽しい気分を盛り上げる。
ひとりウキウキ想像してみる。
この4連休。
子らが小さかったら、どこへ連れただろう。
何があろうと経験貧乏にはさせたくない。
小さい頃こそいろいろな体験をさせることが大事。
あちこち連れ歩くだけでも心の発育が促され、知能の活性も上がるから無為にする訳にはいかない。
一緒に過ごせる休日を有効活用し、子らにとって一生思い出に残る何か、語れる何かをこさえてあげたい。
そう家内と話し合い、何か企画を立て実行しただろう。
そう言えば北海道。
ちょうど星光の高2がコロナ禍でペンディングされていた修学旅行に出るという。
北海道は素晴らしい。
何度行っても飽きることがなく、まるで恋するようにその大地が好きになる。
正宗屋のカウンター。
背を丸めiPhoneの写真に見入る男の頭のなかには広大無辺な北の大地が出現していた。
しかし、と男は思う。
もう子らは大きい。
家族で連れ立てば、大人4人というサイズである。
この4連休、大人4人で遊ぶなら近場の海外が一番いい。
ソウルや上海、台北といったアジア市街の盛り場が入り混ざって男の頭のなか明滅し始めた。
そのように空想を巡らせて小一時間。
家族と過ごす小旅行の時間を満喫し、男は大人のオアシスを後にした。