朝一番、長男からメッセージが届いた。
春期講習で朝から晩まで授業する。
連日続くから地獄のハードさだが頑張る、とのことだった。
食卓で朝のリスニング番組を聴きつつ家族でそのメッセージを回覧した。
家族全員に気合いが入った。
朝から塾の講習がある二男が揚々とまず先に出かけ、続いてわたしも仕事に向かった。
外を回って昼過ぎ。
途中自宅近くを通りかかったので、家に寄った。
仕事の電話がかかりやりとりしていると、家内が目の前にやってきた。
わたしを笑わせようと家内がおどけて踊る。
脳は単純。
眼前の光景と仕事が直接結びついた。
仕事は楽しい。
そう感じた。
午後になって気温は20℃まで上がった。
汗ばんで疲弊した。
市内の移動でタクシーを使った。
「暇でしょうがない」
それが初老の運転手の第一声だった。
今日は125km走ってわたしでやっと8人目の客なのだという。
客一人あたりの上がりはいくらで、いいときなら125kmで何人乗せるのか。
そう質問しようと思うが、運転手が巷の若者について愚痴をこぼし始めた。
鬱憤がよほど溜まっていたのか不安だからなのか。
コロナなど我関せず、そんな風に振る舞う若者が導線になって大変なことになる。
運転手がする話は止むことなく続いた。
ふむふむと頷いているうち目的地に到着した。
夕刻、役所で用事していると家内から電話が入った。
体調が悪い。
そう言って二男が帰宅したのだという。
そんなときは、わしお耳鼻咽喉科。
先日、長男が体調を崩したときと同様。
近所にあって心強い。
診てもらって一安心。
受診後、二男は淡路バーガー2個とポテトを平らげたというから何の心配もない。
単に疲れただけのことだろう。
夜、仕事終了地点が阿倍野。
いつもの習慣、阿倍野正宗屋に向かった。
おそらく、これが最後。
新型肺炎の感染リスクが誰の身にも迫りつつある。
見知らぬ者らが一つ所に固まる場所は敬遠するのが必須。
近いうち、自粛という次元を超えて義務になるであろうから、これが最後で当分訪れることはないだろう。
そう思いつつビールを飲むがまったく平素どおりの世界がそこにあった。
店員は威勢よく客の入りも普段と変わらず、あちこちでぺちゃくちゃと会話が盛り上がっていた。
それが奇異に思えて逆に恐怖を覚えた。
長居すべきでないと判断しさっさと席を立つことにした。
帰宅すると二男はスヤスヤ眠り家内は明日の食事の仕込みをしていた。
家内と一日を振り返っていると、家内あてに長男から絵文字が届いた。
やりきったがへとへと、もう言葉も出ない。
絵文字がそう物語っていた。
朝から晩まで立ちっぱなしで喋りっぱなしであるから無理もない。
人一倍出力のでかい彼のことである、ペース配分を考えず飛ばし過ぎたのだろう。
代わりはいくらでもいる。
単なるバイトなのだから無理することはない。
そうわたしがメッセージを送ると即座返信が届いた。
代わりはいない。
責任がある。
絶対やり切るし夏もやる。
長男の号令で一日の幕が開き、長男の決意表明によって一日の終わりにシブい余韻が残った。
遠隔で丸一日、長男の授業を受け励まされたも同然という話であった。