KORANIKATARU

子らに語る時々日記

一枚の絵によって感覚が一変した

年の瀬だから鍋。

仕事後、野田阪神の満海に寄ってトラフグを引っ提げ、十一屋で選んだスパークリングを手に携え帰宅した。


家内と手分けし夕飯の支度をし、包丁を握った。

が、フグを切るのに難儀した。

こんなに大変なものとは知らなかった。


わたしは一層こうべを垂れ、包丁を握る手に力を入れた。

今度買うときはあらかじめ店で切ってもらわねばならない。

台所での家内の日頃の労苦を思い、悪戦苦闘した。


準備整い、いよいよ鍋をセッティングする段に至った。

わたしは食卓に新聞紙を敷いた。


その中、目に留まった一枚を取り分けた。


朝日新聞夕刊の「美の履歴書」は東山魁夷の『年暮る』。

これを敷く訳にはいかなかった。


夫婦で横並びに座って鍋をつつき、絵に描かれた大晦日の京都を眺めた。


コロナで時間感覚が途切れたからだろう。

今年は季節感が薄く、内を覗けば空白だらけといった感が否めない。


12月終盤に差し掛かっても、年の瀬だと頭では分かるが体感が伴わない。


ところが、一枚の絵によって感覚が一変した。


しみじみとした情感を湛えた『年暮る』が、見れば見るほど深く静かで美しく、内に巣食った一年の空白を見る間に温かなもので満たしていった。 


年の瀬は鍋。

絵によって、てっちりの味わいが数倍増しになった。

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2020年12月26日 息子の朝食(チキンライス,鉄火巻,桔梗堂の大福,ラ・フランス)

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2020年12月25,26日 昼 松屋となか卯

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2020年12月26日 夕飯 長崎産とらふぐでてっちり,てっさ,焼き白子

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昔の写真

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2020年12月22日 朝日新聞夕刊 美の履歴書『年暮る』

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東山魁夷『年暮る』