金曜の夜、久々家族で食卓を囲んだ。
空間が広々としていて、家の居心地は格別。
視線をぐるりと一周させて家内はそう言った。
なんであれ一段落。
くつろいであれこれ話し、そんなひとときをわたしは幸福だと思った。
普通の人はそうしみじみと思ったところで完結する。
が、わたしの場合、その瞬間が消えて失せるのが惜しくて日記に残す。
それでかれこれ続いて、かなり続いた。
しかしその積み重ねが、一体何に結実したと言えるのだろう。
妖怪人間ベム、ベラ、ベロは人間のなりそこねであった。
容姿は醜悪であったが、心は人よりも人らしかった。
彼らは切望した。
はやく人間になりたい。
そして人間のために魑魅魍魎と戦った。
実は人間だって同じ構造のなかに置かれているのかもしれない。
人になることを目指す。
それが人の本来の目的。
そう考えれば、この同語反復に人の人たる所以が潜んでいるように思える。
いつだって半人前であることを痛感し、少しはマシな人間になろうとする。
そんな動機が内蔵されて、人は成長を促される。
そういう視点で見れば、うちのベラやベロたちだって、例外ではない。
日夜善良に努力し頑張っていると言える。
しかし、この戦うチームの中にあって、もっとも強烈強靭で迫力満点なベムであるべきわたしが例外。
終始団欒に憩い、些細なことで感傷にひたり、まるで隠居暮らしを決め込んでいるのであるから、人間失格というようなものだろう。
このところわたしが薄々と感づき始めた自らの非について、ベムが杖を使って指し示し無言のもと活を入れる。
わたしだって早く人間になりたかったはずなのだった。
いつのまにそれを忘れてしまっていたのだろう。
いまならまだ遅すぎるということにはならない。
振り出しに戻って、わたしも現役に復帰。
まずはベムの後ろ姿に倣おうと思う。