目の調子が良くない。
そう言うので荒本おいだ眼科で診察受けるよう父に勧めた。
荒本駅から歩いてすぐと口で説明するが、近くに行くのが手っ取り早い。
河内小阪から足を伸ばし現地へとクルマを走らせた。
東大阪市役所を過ぎ中央大通り沿い、まもなく大きなコンビニが左手に見えた。
おいだ眼科はその真上にある。
クルマから降り、木曜休診のおいだ眼科の所在を父はその目でしっかり確かめた。
今日金曜、父はそこを訪れる。
とてもいい先生だとわたしが勧めた理由が分かるだろう。
以前、義母にも勧めて喜ばれた。
父も同様、種田先生を今後頼りにすることになるだろう。
実家に戻ってクルマを置き、続いてわたしは平野区の事業所へと向かった。
父と過ごした午前中は、身内の気軽さもあり出力ほぼゼロ。
そんな呑気な心模様が、仕事を前に一変していく。
内蔵された出力メーターが徐々に上がっていくのが分かる。
エネルギーが満ちるというより、呑気さと決別しなければならないという寂寥の方が大きい。
が、なぜなのだろう。
客先に入った途端、大きく膨らんでいた寂寥はたちまち消え去って、元気ハツラツ、立て板に水でにこやか話す別の自分が出現した。
いつものこと。
まるで別人。
出力全開の心地よさに浸って小一時間過ごした。
そのままカラオケなどに連れられれば、マイク離さず十八番を数曲熱唱したことだろう。
業務を終えての帰途、とても気分がいい。
充実感、これが仕事の一番の報酬と言えるかもしれない。
夕刻の路上に吹く秋風に冬を感知し、冬支度が整った後の我が家の景色が目に浮かぶ。
ほかほかカーペットのうえ、息子や家内とくつろいで年の瀬のお笑い番組などみてお腹を抱える。
道を行きながら、幸福そのものの光景に一人ほほえんでしまう。
だからだろう。
この日最終地は阿倍野。
幸福ついで、その余韻にひたりつつわたしはひとり正宗屋を訪れた。
もはや常連。
よく食べるお兄さんとして少しは印象に残る客になっているのではないだろうか。