KORANIKATARU

子らに語る時々日記

こちら側と向こう側

夕刻、ヨガ帰りの家内と大阪福島で待ち合わせた。

場所は、焼肉屋の安兵衛。

 

わたしが着いたとき、家内はすでに二階席に座って肉を焼いていた。

合流し、オールフリーで乾杯した。

 

おすすめどころを頼み、どんどん肉を焼いていった。

明らかに周囲の客より焼くピッチが早い。

 

肉食の息子二人を育てたからだろう。

彼らがこの場にいなくても、身についた習慣は不変。

 

所要時間は、のべ一時間半。

ホルモンを除く全種類を食べて、満腹。

 

二人して英気みなぎり、さっそうと店を出た。

まだ明るい福島の街を並んで歩いて、どうした訳か家内がぽつりと言った。

 

来年の元旦は全員揃って墓参りに行こう。

 

そりゃそうだ。

わたしはうんと頷いた。

 

これまでは1月2日が墓参りの日だった。

が、今度はそこに母が眠る。

であれば、元旦の翌日に訪れるなどあり得ない。

 

息子らも呼び寄せ親父も連れ、妹家族も含めみなで墓を訪れ、そこで母と過ごす。

誰に聞くまでもなく、その過ごし方で全員一致となるのは明らかなことだった。

 

まるで会話に母が混ざったようなもの。

ふとそんな考えがよぎった。

母はいまここにいる。

そう思うとそうとしか思えなかった。

 

確信は家内にも伝わった。

二人してそうとしか思えず、しかし、だから一層その不在が際立った。

 

あと10年もしないうちここに入るのだろう。

今年1月2日の墓参りの際、母はそう言った。

まさかと笑ったわたしは、それが母とする最後の墓参りになるなど夢にも思わなかった。

 

こちら側と向こう側は、案外近く地続きで繋がっている。

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2021年6月8日夕刻 大阪福島 安兵衛