ずっと先延ばしにしていたが、とうとうこの日、作業に取り掛かった。
息子ら所蔵の漫画は冊数にして計500は下らない。
二人が小学生になったばかりの頃から買い与え、彼らは彼らで上京するまで話題の漫画を買い続けたから、蔵書は増加の一途をたどった。
ちゃんとした本の読了をもっぱらにしていれば、学力伸長に役立ったのではとも思うが、カエルの子はカエル、漫画であっても読むだけマシだった。
なにしろ二人して元がサル同然。
漫画を読めばそれで十分上等と言えるだろう。
二人はそれぞれいま東京で暮らす。
漫画が家に置いてあってもわたしは困らないし、いつか読もうかとさえ思うが、家内からすれば単なる不要物であって目に障るようであった。
それでかねてから処分するよう云われていたのだった。
運搬道具は段ボール箱ひとつ。
それに詰め込んで3階から1階の玄関まで一体何往復したことだろう。
二男の部屋からはじめて長男の部屋の漫画を全部運び出すまでに2時間はかかった。
買物から帰宅した家内は玄関で声をあげた。
うず高く積まれた漫画の塊は、一種のオブジェさながらの壮観さで、実際、息子らが受けた感化の集積を思えば文字通りアートと言えた。
名作も多々あって処分するのは惜しい気もするが、年下のいとこといった譲り渡す相手もいない。
古本屋に引き受けてもらって、巡り巡って誰かが読めばこれら漫画も本望というものだろう。
卒マンガ。
長く積み重なってきた成長過程が視覚化されたようなものである。
眼前にし実に感慨深い。