台風10号は日曜午前には関東を通り過ぎる。
そうと知ればじっとしていられない。
家にいてもどうせ後片付けや掃除にかかるだけである。
それなら今夏の帰省が叶わぬ長男の部屋をきれいにし食事の支度を整えてあげたい。
家内はそう思った。
猛暑のなか連日ラグビーの練習がありかつ複数のインターンをこなし彼は相当に忙しい。
加えて、オンラインでの開催が決まった三田祭においても何か企みがあるようだ。
西大和での学祭でも体育祭でも大活躍した男である。
何かいっちょうやるに違いない。
朝いちばん、天気予報を耳にして家内は長男から預かった合鍵を固く握りしめた。
行くぞ、と家内が顎でわたしを促した。
ひと気のない経路をたどり、ただ掃除して食事を作り置きして帰ってくるだけ。
何も問題はないだろう。
わたしも賛同し腰を上げた。
二男に留守を託し迷いなくわたしたちは家を出た。
到着は正午。
下北沢の地に二人並んで降り立って、我が子の住処を目指し雨の残る街路を突き進んだ。