三ヶ日が終わって日常の時間が流れ込みはじめた。
1月4日の朝、5時に起き正月に溜まったゴミを計5袋運び出した。
ああ、日常が始まった。
そんな実感が湧いた。
家内はこの日も凄かった。
早朝から起き出し肉を焼いてうなぎを温め、お雑煮を作り、彼らに持たせる食糧の荷詰めも行った。
量が多いからと紙袋の底をガムテープで補強することも忘れない。
二男が起き出し豪勢な料理を旺盛に食べ長男も続いて、口々に言った。
朝からすごい料理やな。
わたしは言った。
忘れているかもしれないが、かつてはもっと品数が多かった。
家内が作った料理については折々写真に撮ってきた。
いつかそれらを一望し彼らは深い感慨とともに記憶を呼び起こされることだろう。
持たせる料理の数はあれもこれもと増えていった。
結局、冷蔵庫にあるお値打ちものすべてが彼らの荷物となった。
まずは7時半、友だちと待ち合わせて帰るとのことで二男が立ち上がった。
玄関で家内と並んで記念撮影してからまた今度と手を振り、その背を見送った。
続いて8時過ぎ、長男が腰を上げた。
お世話になりましたと頭を下げる表情が可愛い。
玄関で家内と並んで記念写真を撮り、同じくその背を見送った。
昔と何ら変わらない。
朝起き出して、長男は西大和に向かい二男は大阪星光に向かった。
朝食をたっぷり食べさせ弁当を持たせ、毎日毎日その背を見送って、家内は美味しい夕飯をこしらえてその帰りを待った。
大学生になって帰宅する頻度が年に数回となっただけで、ここが彼らの家であり、ここから出発することに変わりはない。
彼らを送り出して、ようやく家内に元旦が訪れた。
朝からワイングラスを傾けて、この年末年始の充実を振り返った。
わたしはコーヒーを飲み、家内のグラスにワインを注いだ。
またすぐに会える。
そう思うから家内の表情に寂しいといった影はみじんもなかった。