夫婦揃って38℃まで熱が出た。
家内の様子は普段と何ら変わりなかったが、わたしは青息吐息でふらふら。
寝床についてもうなされて、深夜1時にロキソニンを一粒服んだ。
朝が訪れても同様。
全身がだるく下肢に力が入らないから動けない。
だからソファに寝転んでロキソニンをまた一粒服んでダラダラと過ごす他なかった。
たっぷり睡眠をとって起き出した家内は引き続き元気そうに見えた。
部屋の掃除などをしはじめたので、今日はおとなしくした方がいいと言葉をかけた。
熱はあっても平素と全く変わらない様子の家内であったが、たったひとつだけ異変が生じた。
塩辛いものが食べたいと家内が言って、頭に浮かぶのがポテトチップスなのだという。
うちの日常に登場することのない食べ物であるから一種の副反応だとしか思えない。
ぶらり近くのコンビニまで買いに行こうと思うが昼を過ぎても動けない。
午後3時を前にし家内が言った。
クルマで行こう。
わたしは短パンにTシャツ、家内は短パンにタンクトップ。
部屋着のままクルマに乗り込み、目と鼻の先にあるコンビニに向かった。
わたしは渾身の力を振り絞ってカゴにスナック菓子を放り込んでいった。
そこに家内がミニのカップヌードルを付け足した。
これも日頃まったく登場しない食べ物。
どちらかと言えば禁忌の品と言えたからこれも副反応の現れと言わざるを得ないだろう。
家に帰って念願かなったと嬉々として、二人でジャンクフードをせっせと口に運んだ。
が、ひとしきり食べて双方ともに手が止まった。
カラダに何の足しにもならないどころか毒。
そうはっきりと分かるから胃のあたりに不快感が立ち込め気持ちまで急降下しはじめた。
やはりともに体調は万全ではないのだった。
日頃、食べ物に気を配っている。
発熱時なら尚更もっと気の利いたものを口にすべきだろう。
たとえ熱に浮かされ正気を失ったとしても、ジャンクフードに手出しするなどあってはならないことだった。
夫婦で反省し、結果、泥を払い落とすようにしてより鮮明になったのは我が家を支えてきた食の規律だった。
家内は食に細心の注意を払い、食に最善を尽くしてきた。
そのアイデンティティが強く喚起された。
夜、微熱が残る普通の女房ならサッポロラーメンを作って済ませるのが通り相場と言えるだろう。
だから、たとえ残り物の寄せ集めであったとしてもパスタを作った家内は控え目に言っても上出来の部類に入る。
互い熱を計るが依然として微熱が続く。
が、向き合ってパスタを食べ、まともなものが胃に入って安心、やがて力も満ちると確信できた。
食後は二人してまたドラマ。
『30女の思うこと 上海女子物語』の続きに見入った。