京都まで家内に運転してもらい午前中に業務を終え、昼を済ませてから別行動をとった。
わたしは電車で遠く明石を目指し、家内はクルマで帰ってジムに向かった。
夕刻、車窓の向こうに広がる海を眺めて家路についた。
一日が慌ただしければ慌ただしいほど業務の後は心が安らぐ。
事務所には戻らず直帰した。
クルマがない。
家内はまだジムで頑張っているのだろう。
わたしは着替えて、武庫川へと繰り出した。
日中、直射が地表に降り注ぎ、所構わず熱が一様にこもるが、夕暮れ時、熱がばらけて散って風が生まれる。
水や緑や土の匂いが風とともに吹き寄せてくる。
そんな中をその一部となって走るから、その自由感たるや、まさに「どこ吹く風」といったレベルに至る。
家に戻って風呂を済ませると夕飯の支度が既に整っていた。
いよいよとうもろこしのシーズンが到来した。
届いたばかりのサニーショコラを前菜に、家内が漬けた漬物、パプリカのサラダを食べてメインは、ニンニクと醤油麹にたっぷり漬けたあと焼き上げた手羽中。
名店鳥よしの肉が良く、家内が丁寧に下ごしらえし入念に焼き上げたから当然に美味。
量販店の肉は安くて腐りにくいから人気があるが、うちの家内は手を出さない。
食べ物については多少値が張ってもいいものを選び、手間がかかってもより美味しくなるよう工夫する。
うちの子らにもそんな価値観を叩き込み、実践してきた。
世には家族の食費を削ってでも、身を飾るためのブランドものを優先して買う主婦がいる。
家族の身を削って我が身を飾る、というようなことである。
肉を切らせて骨を断つ、みたいな物騒な話に聞こえて、その過剰なエゴに膝が震える。
食後は前夜同様、韓流ドラマ。
『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』を見始めた。
ゆっくり間延びするように進む恋愛が今回で大きな進展をみせた。
背景は、まるでゴッホの絵画『ローヌ川の星月夜』。
製作者の妄想が映像になったようなものであると分かったうえで、その美しさにほんの少しは魅了された。
お誂え向きとも言える舞台のなか、主役の二人がほんとうに幸福そうにデートする。
だから、蚊帳の外からみる視聴者もその恋の成就を念願するような気持ちになっていく。
幸福に触れることは幸福。
そのお裾分けに与るだけでも嬉しいから、また明日も家内と続きを見ることになる。
全24話、これがもっと続いても誰も文句を言わないだろう。
朝、家族で食事し、日中は大いに仕事し、夕刻、涼風の吹く川べりを走って、夜、女房の手料理を食べ、ワイルドターキーを飲みながらドラマを一緒に見て、息子が帰ってくれば夫婦で囲んで話を聞く。
まさに理想の一日と言えそうだ。
おまけに友だちがみな元気で仲がいい。
キジくんによれば先の日曜日、タコちゃんとキョウちゃんとシブでゴルフしたという。
そんな話を耳にすると、ゴルフに興じる皆の姿が目に浮かんでこちらまで楽しくなってくる。
やはり幸福に触れることは幸福。
わたしたちはいまとてもいいコンディションにあると言えるのだろう。