国立大学の入試が行われるこの金曜と土曜、関西に住む66期の友人らと連れ立って二男は温泉地で過ごす。
そして今季組の入試が終わった後で、晴れてめでたく皆で揃って「ほんとうの」卒業旅行に赴くことになる。
時は移り所は変われど、星光生の仲は不変。
いつでもどこでも集まって、相も変わらず仲がいい。
66期に引き寄せられて二男が帰省し、ほんのひとときの滞在であれ彼が家で過ごすのであれば家内は腕によりをかけ料理を作る。
で、そうなると家内のなか、長男のことも浮上する。
彼女にはヤン坊がいてマー坊がいる。
「二個一」とも言える存在であるから、一方をもてなせば、他方も放っておけないということになる。
祝日となった水曜日、家内は早朝から起き出して料理にかかった。
我が子が食べるのであるから、いつにも増して手間を惜しまない。
嬉々として、米を炊き肉を焼き、今回はホルモンも炒め、前回好評だった牡蠣のオイル漬けは大瓶化した。
それら仕上がった品々をダンボールに詰め、クロネコヤマトの集荷場へと颯爽とクルマを走らせ、そこで家内は気がついた。
添えるはずの漬物各種を入れ忘れてしまった。
普通ならまた次の機会にと諦める。
が、そこは家内。
引き続き颯爽と家へと引き返し、封を開けてまた一から荷詰めにかかるのだった。
そのようにして完成の度を増した荷物がクロネコの手に託されて、長男のもとへと届くことになる。
家内の胸の内にあった長男の笑顔が、箱を開けた長男の顔にまもなく浮かぶ。