朝8時過ぎ、ホテルを出た。
まだ雨が降り続いていた。
東急線の駒沢大学駅で降りるつもりが電車は三軒茶屋を出たあと目的の駅を通り過ぎ、ずんずん進み二子玉川で停車した。
大和路快速は久宝寺を出たあと王寺まで行ってしまう。
近鉄大阪線の急行は布施の次、河内国分まで停まらない。
それらと同様なことが東京でも起こるのだった。
二子玉川から普通電車で引き返す。
渋谷へと向かう普通電車は土曜日なのに混んでいた。
息を詰め、こらえ、そうしてわたしは長男に会うことがかなった。
せっかく東京に来た。
相手がいくら忙しかろうが間隙を縫ってでも会う。
そのつもりだった。
毎日のように電話で話す。
が、対面だと文字通り場が立体的となり得られる情報量が全く異なる。
やあ、と会って、彼が次の予定地へと向かう道中にタクシーを使い、雨降る街並みを眺めつつ40分ほど会話した。
やはり会ってよかった。
そう思った。
長男と別れ、家内がいる早稲田に向かった。
この日、ペアレンツデーが催され家内は大隈講堂の中にあった。
家内を待つ間、あたり一帯をぶらついて、そのキャンパスの壮観に目を見張った。
ちょっと変わったものを食べようと、昼は大学近くで沖縄そばを向き合って食べた。
そこからバスに乗り千駄ヶ谷で降りたとき、ようやく晴れ間が見えた。
前日同様、ホテルの大浴場に入り部屋でくつろいだ。
窓から爽やかな風が吹き込んで緑の香もあって実に清々しい。
そして、そんな心地よい風の吹くなか自転車で連れ立ち、赤坂に向かった。
予約してあったのは赤坂のチョンソル。
二男たっての希望で選んだ店だった。
午後6時、二男が現れ家族三人での宴が始まった。
本場さながらの美味に感嘆しつつ飲んで食べ、長男が腹を空かせて午後8時半には帰宅するとの情報を得た。
家内は店員に持ち帰り用のポッサッムを頼み、近所にある名店一龍に電話をかけ、上カルビ定食3,900円、ソルロンタン1,650円をいずれも二人前注文した。
長男も人一倍食べる。
二人前を注文するのは当然の話だった。
食事を終え一龍で品を受け取り、通りかかったタクシーに家族三人で乗り込んだ。
向かうは下北沢、長男の下宿。
わたしたちは四人で一個。
ベム、ベラ、ベル、ベロ。
四人家族なのだった。