朝五時、いつもの時間に目が覚めた。
外はもう明るい。
ホテルを出て、そこらをひとりぶらついた。
土曜日であるから大手町に人の気配はほとんどない。
都心であるのに緑が豊富で、ほんのりと冷えた朝の空気の鮮度は特筆すべきものであった。
このあたりで息子が過ごすことになる。
そんな様子を頭に浮かべ、無人の街をあてもなく歩いた。
まもなく家内も目を覚まし、朝十時半、目当てのクッキーを手に入れた。
ここでのみ販売される希少なものだと家内が言うとおり、発売日であったこの日、多くの人が待ち構えていて瞬く間に完売となった。
善は急げ。
自転車を借り中央郵便局のゆうゆう窓口に向かい、プチプチシートで梱包し割れ物だと告げて入手したてのクッキーを託した。
これで用事は完了。
その足で北へと向かった。
途中、厳粛な雰囲気の列があり、わたしたちは自転車を降りそこに続いた。
他の方と同様、わたしたちも押し黙って将門塚で手を合わせた。
そこから神田に向かった。
そばを食べようか、とんかつにしようか。
家内がとんかつだと言うので、やまいちの列に並んだ。
なんておいしいのだろう。
並んだ甲斐があった。
とんかつがこれほど美味しいのだと初めて知った。
お腹も膨れて自転車で疾走した。
スカイツリーを目印にして進み下町を徘徊し、隅田川を越えて戻って浅草寺の人だかりを遠巻きにして大手町方面へと帰還し丸の内の千疋屋でおやつを買った。
夕刻、長男と待ち合わせて御茶ノ水「テロワール・カワバタ」へと向かい、まもなく二男も合流した。
歴代総理も訪れたという名店であった。
なんておいしいのだろう。
感動の連続であった。
そしてまたタクシーで大手町に引き返して家族で過ごし語らった。
お祝いのケーキを食べ終えて解散。
駅の改札まで四人で歩いて、それぞれにお土産の靴と服を手渡して、それぞれの背を見送った。
今回の上京において、メインはこの二日目だった。
息子たちに会え一緒に過ごし、最上の一日となった。