来月引っ越すにしても、まだしばらくは大学に通う。
となると、大手町にも三田にもつながる都営三田線が利便で優る。
それで千駄木とは別途、春日あたりの物件も探索することにした。
不動産屋の軽自動車にわたしたち夫婦と長男が同乗し、各地町並みに目を注ぎながら候補物件を見て回った。
結果、本郷にて出合いがあった。
このほど建ったばかりで真新しい。
丸ノ内線の駅も近くここからも三駅行けば大手町に至る。
かくして、千駄木の物件はたった一日で色褪せた。
本郷だから東京大学が目と鼻の先で、西大和主催の東大見学の際にかつて宿泊した旅館が近くにあって、息子が懐かしそうに声をあげた。
太い縁はなかったが、細い縁はある。
そんな話と言えるのだろう。
近くにやはり西大和時代の友人らが住んでいるというし、それもまた心強い話と言えた。
これが土曜日で明けて日曜。
わたしと家内は電車に乗って物件を再訪した。
おいしいとんかつ屋があると聞いたので水道橋で降り、腹ごしらえし、そこから都営三田線の春日で降りて、物件を含めた界隈をぶらり歩いた。
新住居はなだらかな坂をあがった台地に位置し、辺り一帯静かで緑が多く心落ち着く。
ここで新たな暮らしが始まる。
いいではないか。
二階の部屋を見上げて夫婦でそう感じた。
帰りは本郷三丁目駅から丸ノ内線を伝って東京駅で降り、やれやれ任務完了。
午後四時発ののぞみで東京の地を離れた。