午後早くに業務が終わって、後は用事がない。
子どもの頃、学校が早く終わると歓喜した。
そんな童心に帰って、清荒神を後にし足取り軽く宝塚駅に向かった。
日差しは強いが空気の中にまだらに秋が感じられる。
秋の匂いを嗅ぎ分けるようにして歩いて、身中に秋が蓄積され、汗は滲むがすっかり気分は秋めいた。
晴れ渡る空のもと、これから開演なのだろう、宝塚大劇場へと続く道は女子らで埋め尽くされていた。
皆、着飾ってただでさえ華やかな街がいっそう映えて華やいだ。
そして、わたしは自由の身。
物見にうつつを抜かしてぶらついて実に過ごし良い。
いつもは圧をかけてくる時間が手を緩め、優しい手付きでわたしを持ち上げ運んでくれるようなもの。
そんな楽ちんに身を任せ、呼吸は楽で存在すること自体の喜びにわたしはひたった。
ご機嫌に過ごすと腹が減る。
どれどれと店を物色して昼食を済ませることにした。
冷麺を賞味し終えて帰途に就く。
行きと同様、JRを使ってもよかったが、多少遠回りとなってもどうせ暇、帰りは阪急電車を選んだ。
ガタゴトと電車に揺れら、窓外の瀟洒でのどかな街並みに目をやって気づけば西宮北口に着いていた。
やはり、暇。
ガーデンズをぶらついて、週末の酒のつまみなどを各種買ってから家に向かった。
この日もまたジムにてワークアウトに勤しんだ。
もちろん、月曜、火曜とソーバーキュリアスで、帰宅後は家内の二万語に耳を傾け、そして静かに書物と向き合った。
何の変哲もない、朝から晩まで平板で平凡な平日であったが、これぞ幸せとの要素が詰まった中身濃厚な一日だった。