午前中の業務の帰り、通りかかったので実家に寄った。
5月が近づき街が日に日に輝きを増している。
その分、部屋の中が薄暗く感じられた。
父は座椅子にもたれテレビをみていた。
わたしは炬燵の角隣に座って最近の息子たちの写真を父に見せていった。
孫の写真をみて、父の表情は途端に明るくなった。
小さかった孫がいまや青年となり、ますます自分に似ているとの感が強まったのだろう。
若い頃の自分と孫の現在を引き合わせ、楽しそうに父は昔の自分についてあれこれ語った。
若い頃の髪型へのこだわりや服の趣味など、わたしが知らない話をいろいろと聞くことができた。
父の新しい一面を知って小一時間ほど過ごし、まもなくわたしは実家を後にした。
いつもどおり鶴橋で途中下車して冷麺を食べた。
いつにも増して美味しいと感じた。
そう言えば、今年一番の陽気と天気予報が伝えていた。
もうそんな季節になったのだった。
この日は午後に大和八木にて業務があったから食べ終えて、近鉄電車で移動した。
夕刻前に業務を終え、事業主とともに急行電車に乗って帰阪の途に就いた。
眼前に奈良盆地を眺めつつ横並びに座り、ぽつりぽつり言葉を交わした。
以前から面識はあったが、この度新しく仕事を手伝うことになった。
こうして一対一で話をするのははじめてのことだった。
共通の友人も多いから話すことはいくらでもあった。
目の前の景色が大阪平野へと移り変わる頃には、双方プライベートな話までして打ち解けた。
仕事であろうがなかろうが、やはりいろいろな人と話してみるものである。
皆に再会していこう。
近鉄電車に揺られ、わたしはそんなことを考えていた。
上本町駅でわかれる際、駅構内のアンファンにて事業主がわたしに手土産を持たせてくれた。
それを事務所に届け、続いてわたしは梅田に向かった。
家内と梅田阪急にて合流し、金曜だからどこかで食べて帰ることにした。
寿司も焼肉も飽いてきた。
趣向を変えてこの夜はサントリーウイスキーハウスに行こうと夫婦で意見が一致した。
ウイスキー人気を反映し、店は開店と同時にほぼ満員となった。
そんな賑わいのなかサントリー銘柄の各種ウイスキーをハイボールで頼んで、その香りを楽しみ、静かに味わい、引き続く余韻に夫婦でひたった。
五十を過ぎた初老の夫婦にウイスキーはもってこいのお酒と言えた。
夕飯を済ませ、二人で梅田の街をぶらついた。
家内に連れられグランフロントにて夫婦で水着を選び、リンクス梅田のアシックスでシューズを買い求めた。
これでまた当分の間、わたしたちは共通の趣味にしっかり取り組むことができる。
最後にヨドバシカメラで週末に飲むワインを2本選んで、発車間際のJR神戸線の電車に駆け込んだ。
運良く横並びで座れた。
二人で過ごす。
そんな場面の続いた一日のトリを務めるのは、もちろんわたしの女房なのだった。