息子たちは二人とも文章がうまい。
幼少期、家内は読み聞かせを欠かさなかった。
小学生低学年の頃はクルマのなかで日本の名作の朗読を繰り返し流した。
加えて、これはという内容の天声人語を遊び感覚で筆写させた。
小学校高学年になったときには出先でいつでも読めるよう取り分けた新聞記事を持たせた。
ちょっと空いた時間があれば文字を読むという習慣がそれで根付いたように思う。
そんな積み重ねがものを言い、わたしとは大違い、彼らは正しくかつ上手に文章が書けるようになった。
ときに二人の文章に触れることがある。
そんなとき家内とともに感心する。
いやあ、うまいねと。
強く頼もしく育ったその体格だけでなく、親は息子の文章にだって目を細めるのだった。
そのように新聞は子育てを通じて欠かせぬアイテムで、うちでは昔から朝日新聞を購読していた。
だから旅先などでは異なる新聞を手にとって、最近、毎日新聞にタメになる記事が多いと感じるようになった。
それでこのほど朝日新聞に加え毎日新聞も朝夕刊を配達してもらうことにした。
玄関先にてまずは15ヶ月分を契約し、貰った粗品の洗剤を収納庫に入れているときインターフォンが鳴った。
33期のスキイチだった。
コロナ禍がようやく出口を抜け、3年前にあった日常生活や風景が戻ってきた。
これからはどんどん友だちに会っていこう。
そう思ってこの日の夜、近所に住むスキイチにご飯を食べにおいでと声をかけていたのだった。
スキイチは家内が用意した料理をみて驚いた。
が、これは普段着ならぬ普段食であり、盛り付けをよくしたから見映えするだけのことであった。
牛肉と鶏肉はパルヤマト、たけのこは奈良の明日香村、まぐろとかつおとタコは中央卸売市場近くの魚屋で買ったもので、巻きずしは湯葉で巻いてあるが、まぐろを手巻きにするならいい海苔がある、茄子も生姜とニンニクで時間をかけて仕込んであるから味がよくピクルス同様いい箸休めになる、ご飯が足りなければうな丼もあるし、熱いものが必要なら濃厚なトマトスープもあると、一品一品についてわたしが説明を加えた。
前夜ヨドバシカメラで買った甲州ワインを開け、旧交を温める時間が始まった。
話してよく分かった。
わたしたち33期は大阪星光が大好きで、66期のうちの息子も大勢の友だちを得て大阪星光が大好きだが、母たちから見ると意見が異なる。
自分の息子にほんとうにとてもよくしてくれた。
そう肌で感じるから母らはみんな熱い思いをもって西大和のことが好きになる。
西大和「推し」のベースには息子愛が横たわっている。
だから揺らがず盤石で、他とは比較にならないのだった。