旅先であっても運動を欠かさない。
日曜の朝、ホテル19階にあるフィットネスに向かった。
トレッドミルを使って傾斜を走り、たっぷり汗をかき、部屋でゆっくり風呂に入ってからホテルを出た。
朝の情報番組でフルーツパフェなどの特集が組まれていた。
それを家内が目にしたものだから、行き先は銀座千疋屋で決まりだった。
そんなにも嬉しいものなのだろうか。
歓喜する家内の表情を見て、わたしは味見程度で済ませた。
そうこうしている間にまもなく昼。
丸ノ内線に乗って春日駅で降り、待ち合わせ場所である焼肉屋へと足を運んだ。
わたしたちが一番乗りだった。
案内された四人席が窮屈だったので、これではゆっくり食事ができないと店主に伝え六人席に変更してもらった。
席を移ったとき、二男が現れ、続いて長男も姿を見せた。
六人席でちょうど。
息子たちをみて店主も納得したことだろう。
久々に家族四人が集結した。
ビールで乾杯してから肉を次々頼んでいった。
上塩タンが厚切り、薄切りとも美味しく、そこでリピートを繰り返し、注文がなかなか先へと進まない。
タンを終えてフィレを頼み、そしてここでようやく上ロースの出番がやってきて、店のおすすめだというハラミが続いた。
四人が勢ぞろいする機会は滅多にない。
だからあれも食べろこれも食べろと序盤から飛ばし、わたしと家内は2つの網をフル回転させ肉をしきりに焼いて、息子たち二人は焼けるなりどんどん口へと運んでいった。
箸休めに頼んだテールスープを食べる段階で、食べるより喋る方の比重が増していった。
やはり長男は引き続き忙しく、新人のための3ヶ月研修といったものとは無縁の会社であって、いきなり仕事を与えられ、会議でも本気のアウトプットが求められる。
海外のお客さんとは英語でコミュニケーションをとるから、一気に英語力も練磨されているという。
そうか、それならもっと食べないと。
そうして、更に肉を追加しどんどん焼いて、「喋る」と「食べる」の均衡が高いレベルで保たれ続けた。
品数限定という塩冷麺で締め、息子らのためカルビ弁当のテイクアウトを頼んだ。
店を出て、これから渋谷に出かけるという長男を春日駅で見送り、長男の下宿に弁当をおいてからわたしたち3人はタクシーに乗り込んだ。
途中、東京駅で二男をおろしてその背を見送り、わたしたちは銀座に向かった。
長男のため服を買おうと家内があれこれ店を渡り歩き、わたしが長男の代わりに試着した。
シャツとパンツを二組選び、気づけば夕刻になっていた。
帰阪する前はマッサージを恒例にする。
そう決めてあったので、前日、八重洲のラフィーネを予約していた。
夫婦ふたりでネックとリフレで60分癒やしの時間を過ごし、大丸東京の地下で食料を買い込んだ。
海苔弁山登りのチーズ竹輪一本揚げ海、鳥幸の焼鳥、崎陽軒のしゅうまい弁当、たまひでからっ鳥の揚げたての唐揚げ、つきじ鈴富のまぐろの唐揚げといったラインナップを携えてわたしたちは車中の人となった。
お腹を痛めて産んだ我が子二人に会え、ひとときを過ごせた。
車窓に映る家内の横顔はたいそう幸せそうに見えた。