KORANIKATARU

子らに語る時々日記

二人で過ごした滞在二日目

土曜日の朝、目覚めてすぐ家内とともにタワー館へと移動しプールで泳いだ。

 

こんな都心の20階で泳ぐなど滅多にない機会である。

そう思うから名残を惜しむようにいつもより多目に泳いだ。

 

それが原因だろう。

ジムで走ってサウナで仕上げ、部屋に戻ったときには双方とも草臥れ果てていた。

 

部屋の居心地も良かったから食事は部屋でとることにし、チェックアウトを午後3時まで延ばしてもらった。

 

昼近くに朝昼兼用の食事を済ませ、淹れたてのコーヒーを飲みつつわたしはデスクワークして、家内はのんびりネットフリックスなどみて過ごした。

 

夕刻、日比谷近くで自転車を借り、そこから長男の下宿先までサイクリングし冷蔵庫に食料をどっさり詰めた。

その足で白山神社に寄って文京あじさい祭りを見学し、出発して一時間後には日比谷に戻った。

 

東京ミッドタウンには映画館があるからだろう。

若いカップルが目立った。

そんな中をぶらついて、テラスで夕飯をとった。

土曜夕刻の涼風が実に心地よかった。

 

この日は東京タワーの見える部屋を家内が予約してくれていた。

「アド街ック天国」では横浜磯子が取り上げられていて、そこに行く予定もないから見るともなし見て部屋でのんびりくつろいでいると、右肩が張って仕方がないと家内が苦しそうに訴えた。

 

素人では手に負えない。

プロによる手当てが必要だった。

 

マッサージを呼ぼうと電話をかけるが、予約が立て込んでいて早くて夜中の2時半の訪問になるというから断った。

 

女房のつらそうな様子が見ていられず急ぎネットで調べてみると、新橋あたりに24時間営業のマッサージ屋などが幾つもあったから電話した。

星苑という店だと二人同時に施術できるとのことだったのでそこに決めた。

 

歓楽街といった様相の夜の通りを二人で歩き、やはり付き添ってよかったとわたしは思った。

店はちょっとまがまがしいような雰囲気のビルの3階にあった。

 

セラピストがみなミニスカートだったからどのような趣向なのかと戸惑うものの、家内の肩が張るのであるから致し方ない。

午後11時、家内が先に案内され、その隣の部屋へとわたしはいざなわれた。

 

家内の話し声が聞こえ満足している様子が分かって、それでわたしは安心した。

しかし、わたしの方の施術は、力なくバリエーションなくしょっちゅう席を外すようなやる気ゼロといったようなものであった。

夜だからセラピストは疲れていたのかもしれないし、そうであれば不満を述べたところで何か悪いような気がして、わたしはただただ無となって過ごした。

 

途中、新規の客がやってきて、入り口で話す声が聞こえた。

ホワット・カインド・オブ・マッサージ・ドゥーユーハブ?

 

コロナ禍が終わって、こんなところにも外国人観光客が姿を見せるようになったのだった。

セラピスト全員が中国語を話していたが、受付の女子はその質問に対しきっぱりと言い切った。

「ジャパニーズ・マッサージ」

 

そう言っておけば、外国人客はありがたがって喜ぶ。

その端的なやりとりから、「ジャパニーズ・マッサージ」が何か意味を有する定型句なのだろうと推察できた。

 

零時過ぎ、ほぼ同時にマッサージが終わった。

家内を担当したセラピストがエレベーターまで送ってくれて、家内はそのミニスカートの女子に何度もお礼を述べた。

わたしは人がいいから、店を去る際、「マッサージ、とってもよかった、ありがとう」とウソをついた。

 

すっかり家内は肩が楽になった様子で、お腹まで空いたと言うから、通りにあったラーメン屋のカウンターに二人で並んで座った。

 

もやしラーメンを食べながら、わたしは昔のことを思い出していた。

 

夜中零時すぎに女房と麺類を食べたことがかつて一度だけあった。

24年ほどさかのぼったある日のこと。

わたしたちは結婚し、式をあげたホテルに宿泊していたのであったが、夜中にお腹が空いて街に出た。

 

そのときに焼肉屋で食べた冷麺が一度目で、今回のラーメンで二度目。

 

二度あることは三度ある。

いつかまた女房と夜中に麺類を食べることもあるのだろう。

 

そんなことを思いつつ、ますます妖しく輝く夜の街を抜け部屋へと戻った。

アクの強かった地上の光も高層階から見れば希釈され、ただただ美しく見えた。

2023年6月10日 部屋でブランチ

2023年6月10日午後 白山神社 文京あじさいまつり

2023年6月10日夕刻 東京ミッドタウン日比谷 ルビーナ

2023年6月10日 ブラッサム日比谷 コーナーツイン2326号室

2023年6月10日深夜 新橋 博多天神