昨年のクリスマスに博多を訪れた。
ちょうど日本列島各地が大雪に見舞われた日で、博多でも窓外に雪が舞っていた。
そんな風情ある景色を眺めつつ寿司を食べ、横に座る若い女性に家内が声をかけた。
彼女は韓国から博多を訪れていた韓国人観光客で、家内はその女子と意気投合し、今に至るも連絡を取り合っている。
その女子が小さな頃から通う店があり、ソウルに来たらぜひその店で冷麺を食べるよう家内は助言を受けていた。
だからわたしたちはソウルのホテルに着いてすぐその冷麺屋を目指したのだった。
店はタクシーで明洞から東大門方面へと向かって10分ほどの場所にあった。
午後3時という中途半端な時間にもかかわらず店はほぼ満席だった。
席に案内されて、おすすめの品をそれぞれ頼んだ。
一口食べて、息を呑んだ。
あっさりとした味わいのなか、やがてじんわりと確かな旨味が広がっていった。
かなりおいしい。
地元の客が一人で二杯、三杯と冷麺をすする光景に納得がいった。
わたしもここで全力投球していいのであれば、軽く三杯は飲み込めただろう。
幸先のいい出だしとなった。
続いて、Naver Mapで検索し、少し歩いたところに人気のサムギョプサル店があると分かった。
小雨が降り出したのでセブンイレブンでビニール傘を2本買い、家内とソウルの街路を並んで歩いた。
アップルウォッチが示す地元の気温は27℃。
散歩して空気がとても快適に感じられた。
4時前なのにサムギョプサル屋も大盛況で大勢の客で賑わっていた。
韓国語の表示しかなく解読できず、ただただ「おすすめ」を頼んでなんとか通じたようで、料理が次々と運ばれてきた。
ビールを飲んで食べる本場のサムギョプサルのうまいことといったらなかった。
柔らかく味わい深く際限なく食べることができた。
誰もが締めにジャージャー麺を選んでいて、当然のようにわたしたちのテーブルにも運ばれてきた。
映画やドラマでしか目にしたことのないジャージャー麺が眼前にあった。
家内と二人で分けて、これまたうまいのなんの。
わたしたちは隣国のカジュアルな美味に深い感動を覚えた。
そこから地下鉄に乗って、乙支路入口駅へと向かった。
目当てはロッテ百貨店の免税店で、ここでなんと家内は運命の出合いを果たすことになるのだった。
おそらく日本では手に入らないだろう。
そんな品が奥から出てきたからわたしたちは色めき立った。
しかしすぐには決断せず、取り置きだけを頼んでいったんそこを後にした。
エスカレーターで順々に階下へと降り、食品売り場をぶらついて、ようやくそこで結論に達した。
やはり、買うべきだろう。
それですぐさま店へと戻って決済すると、最上階のVIPラウンジへと案内された。
わたしたちはコーヒーを頂いたのであるが、これほど思い出深いティータイムは生涯を通じてそうそうないだろう。
ロッテ百貨店から宿までは歩いて5分ほどの距離だった。
部屋に戻って、ホテルのラウンジも利用しないと勿体ないと思い、空腹ではなかったが、わたしたちはまた飲んで食べることになった。
隣町を旅するのに胃袋は一つでは足りない。
初日から夫婦でそう痛感した。