うつらうつらしても電車なら次の駅まで乗り過ごす程度で済むがクルマだったらあの世へと運ばれてしまいかねない。
ハンドルを握って長距離を走るとき、たまに睡魔に襲われる。
特にここ最近、日焼けを避けるため家内が後部座席を選んでクッションなども備えおき、長距離を行くときはクルマが快適な寝台車と化すから、話し相手もなく、だからいつしか睡魔が真隣に忍び寄る。
意志して眠気を跳ね除けることは困難で、そんなときは渾身の力でハンドルを強く握ってパーキングエリアまで持ち堪え、メガシャキなどを喉に流し込み明瞭な意識を呼び寄せる。
夏休み三日目。
徳島を発ってからそんなことを二度も三度も繰り返し、今治を経てようやくのこと鞆の浦にたどり着いた。
昔風情の港町を歩く。
視界が澄みわたって吹く風も心地よく、ここで結婚式を挙げるのだと喜びに満ち溢れたオーストラリア人百人の団体客とも出くわして、無事であることに心から安堵した。