日中、鞆の浦を散策し福山で夕飯を楽しみ、そして15日の朝に帰阪する。
そう予定していた。
が、台風7号接近のニュースを見ると15日の様子が見通せない。
おそらく身動きが取れず足止めを食らう。
そこで立ち往生してしまうと後半の予定に支障が生じる。
だから旅を切り上げ14日には帰途に就くことにした。
誰がどう考えても同じ結論に達するであろうからグズグズせず、渋滞を避けるため朝食を食べてすぐに宿を出た。
福山東から高速に乗り、幸いなこと眠気にも渋滞にもとらわれることなく快調に走って3時間。
宝塚インターで降りたのであったが、道中ずっと抜きつ抜かれつした福山ナンバーのBMWが武庫川沿いの道まで一緒だったから、なんというのだろう、旧知の仲といった親近感を覚えた。
なるほど道中を同じくするからこそ。
クルマを走らせ同級生への親しみといったものの本質について深く理解が及んだ。
昼を前に自宅に到着した。
公園の樹木が風に揺れ、雨滴がときおり地を打って、台風の接近を如実に告げ知らせていたが、もう安心。
家ほど居心地のいい場所はないのだった。
そう言えば四年前の8月14日も台風の影響を受けた。
そのときわたしたちは松山にいて西日本に台風10号が迫っていた。
帰阪を前にJALの運行情報をチェックすると、離陸しても引き返す可能性があるとの記載があった。
それで慌てて高速バスのチケットを買い求め、熾烈な争奪戦を経てなんとか三宮行きの座席2つを確保した。
そして昼過ぎの飛行機はあてにせず、わたしたちは朝八時を前にバスに乗り込み松山を後にしたのだった。
このときも到着は昼。
無事、神戸の街に着いてほっと安堵した。
松山では和食が続いたから、神戸ではカレーを食べ、そして家に戻った。
このように随所でトリックスター的に台風がわたしたちの夏の旅行に水を差す。
が、それがあってこそ思い出が色濃くなって、なにより道中をともにする戦友感も強化される。
一緒に生きていればハプニングがつきもので、それをもプラスに受けて止めて、前を向き続ける。
そういうことを学ぶことができるからまさに旅は人生の縮図であり、スパイスのような役割を果たして人生によりよい味付けを施してくれる。
台風が過ぎればまた旅に出る。
二人の人生がまた更に味わい深いものになっていく。