晴天の日曜、まだスヤスヤと眠る家内を部屋に残しわたしは朝の散歩に出かけた。
人の通りはほとんどなく、ひんやりとした空気に身をひたし、のびやか歩いて実に心地いい。
そして、たまに見かける人が外国人ツーリストに限られたからか、なんとも不思議なことに未知の地を歩いているといった異郷感が湧き上がった。
銀座二丁目に差し掛かり、その名も「世界の朝ごはんWORLD BREAKFAST ALLDAY」という店があって、覗き込むと外国人客で混み合っていた。
異郷感ついでにそこで朝食を買い求めることにした。
マレーシアセットを2つ手に提げ、またぶらり異郷の地を気長に歩いてホテルへと戻った。
前夜、二男と話した。
焦らず弛まず、楽しみも盛りだくさんに含み込んで、おおらか進もう。
だからなおさら。
歩くことが楽しいと感じられた。
ホテルのテラスで朝食を済ませ、それぞれスパで過ごし、昼前になって電車に乗って上野に向かった。
この日は長男と待ち合わせをしていた。
予約してあった店の名は「すし尽誠」。
名店である。
個室で待つこと数分、まもなく長男が現れた。
短パンにTシャツ姿で、食べた後でジムに行くというからなんとも活発なことである。
寿司を食べつつ、あれこれ話した。
会社の人がみないい人ばかり。
そんな話を聞いて、家内は大いに安心し、部署の先輩だと二年目でだいたい一千万になるようだとの話を聞いて、更に家内の安心の度は増した。
22歳で五百、23歳で千なら滑り出しとしては上々。
でもまあお金より何より、「焦らず弛まず、大いに楽しみ、おおらか進もう」とわたしは前夜二男にしたのと同様の話を長男にもするのだった。
そのうち二男も働き出す。
そうすればうちの家の男衆の主題は仕事一色に染まるだろう。
当分のあいだ無力な若造であるから崖をよじ登るみたいに息子二人はなにかとしんどい思いもするだろうが、男子の本番は35歳から。
そのとき仕事というフィールドで最強化していればいいのであるからぼちぼち這い上がるので十分間に合う。
食事を終え、ジムへと向けて長男は駆け出していった。
御徒町中央通りの人混みを縫って走るその背を夫婦で見送って、ちびっ子当時の走る姿がその背に重なるから感慨もひとしおというものだった。
あとは夫婦でそこらをぶらりと歩き、東京へと出て丸の内側を歩いた後は、東京駅を横断し八重洲側に出てそこら一帯も歩き回った。
そして、帰阪前に恒例となったマッサージの時間がやってきた。
わたしは足30分、カラダ60分の90分コース、家内は足40分、カラダ45分の85分セットを選んだ。
わたしの担当は新井くんという青年だったのであるが、整体の施術で鍛えた彼のツボの貫通率が素晴らしかった。
時に痛いが効き目は抜群で、わたしは正しいマッサージがカラダにもたらす恩恵について改めて深く痛感することになった。
そして東京ミッドタウン八重洲と大丸で旅のお供を購入し、午後7時半、車中の人となって宴の時間が始まった。
インスタ女子なら言うだろう。
最高過ぎる、幸せ過ぎる。
マッサージの余韻に依然とろけるカラダをシートに深々と横たえ、身に余り過ぎる悦楽にわたしたちはひたった。