夕方にはプサンを発つから、食べる機会は朝と昼のあと二回に限られた。
朝はソルロンタンの人気店を選んだ。
8時の開店と同時、タクシーで乗りつけた。
日曜の朝、彼の地定番の朝食の場は人で溢れていた。
濃厚な牛骨スープにごはんとうどんが入って、牛肉がたっぷり敷き詰められていた。
見るからに栄養満点で、一口食べて沁み入った。
なんて美味しいのだろう。
店内は涼しかったが、次第、汗ばんだ。
そして大袈裟な話ではなく、叫びたくなるくらい元気になった。
腹ごしらえを終え、一度くらいはプサンでも地下鉄に乗ろうとなって南蒲から西面へと移動し、ロッテ百貨店の免税店へと向かった。
チェックインの際、ホテルからロッテ免税店の割引チケットを貰っていたが、食べることばかり考えていたわたしは持参するのを忘れてしまった。
買う額によっては100ドルもの節約になる。
だからそんなチケットを忘れたと言えば、家内の買い物心に水を差す。
わたしは割引チケットの存在自体について家内に触れずにおくことにした。
免税エリアはがら空きで、コロナ後しばらく経つがまだ客足は戻っていないとのことだった。
あれこれ試着に付き合って、家内がコートを選んで用事は完了。
地下鉄でまた南蒲へと戻り、やはりこれは外せないと前日同様、わたしたちはマッサージ屋へと寄り道した。
終えて時刻は午後1時。
JTBには午後2時にホテルまで迎えに来てくれるよう頼んであった。
残り1時間。
さあ、ラストスパート。
往来でタクシーを拾って、ホルモン通りへと急いだ。
絶大な人気を誇る名店であり、待ち客もあったと見えたが、どういう訳かわたしたちはさっさと奥の席へと案内された。
店主と思しき男性が奥から出てきて一枚一枚各種ホルモンを丁寧に焼いてくれた。
最上のもてなしに違いなく、食べておいしく、このおいしさはこの旅のベストオブザベストと言えた。
店内に空調などなくポータブルな扇風機が置かれるだけで、噴き出す汗もそのままに夫婦でホルモンをぱくついた。
そして仕上げは特製焼き飯。
これまた美味しく家内と二人であっという間に平らげた。
カードが使えず財布に残っていたウォンをありったけかき集めてなんとか無事勘定が果たせ、急ぎ店を出て目についたタクシーを止めて乗り込み午後2時ジャスト、ホテルのロビーに到着した。
そのように雪崩れ込むようにして日本へと帰国し日常へと復帰したが、プサンの強烈美味な品々がいまも鮮明に脳裡に焼きついて離れない。