KORANIKATARU

子らに語る時々日記

三日目も駆け足でまわってその走り書き

朝の涼風のなか芝生の上で家内はヨガのレッスンを受け、わたしは海を向こうに眺めつつ自重を用いて筋トレに励んだ。

 

好天が続いて、海は至って穏やか。

立ち入りを固く制限された昨年の海とは、まったく別種の表情を見せていた。

 

捻挫した右足をかばいつつスクワットしながら思った。

 

当初痛みがひどかったときにはこの旅行をキャンセルすることさえ考えた。

立つことも覚束ないから、そんな状態であれば楽しむどころか毎秒毎秒が苦行になると見込まれた。

 

一時はどうなることかと暗雲立ち込めたが、31期の西先生のおかげで晴れ渡った。

 

くるぶしを覆う簡易ギプスによって患部へのダメージが大幅に軽減され、耐え難い痛みが単なる痛みへと変化して、やがてその痛みも微かなものへと急速に薄れていった。

 

だから、念のためにと渡された松葉杖も携行不要となって、わたしはあちこち移動し海に入って空まで飛んだ。

 

家内とホテルのロビーで待ち合わせて、前日と同様、朝食の場所にシローを選んだ。

飽きもせず家内はパンケーキを頼み、わたしは趣向を変えてそば粉のガレットを注文した。

 

このわたしのチョイスがなかなかで、だから家内にガレットの味見をすすめたのであったが、いちばんトロリとしておいしいところを含めパクリパクリと領土のおよそ3分の1以上を召し上げられた。

 

苦しゅうないとご機嫌うるわしいお館様を横目にわたしは顔色を失くしかけたが、そんな様子を悟られぬようなんとか平静を取り繕った。

 

当然、わたしの方が先に食べ終えて、今日の行き先についてあれこれ調べ、調べれば調べるほど時間が限られていることが明白になった。

 

わたしたちは珈琲を飲み終わらぬうちに店を出て、さっさと身支度してチェックアウトを済ませクルマに乗り込んだ。

 

まずは美ら海(ちゅらうみ)水族館へとまっすぐ向かった。

アジアNo.1水族館とのことで世界ランキングでも9位に番付される。

そう聞けば外せない。

 

胸のすくような広々とした空と海を見渡しながらクルマを走らせ、そして、まもなくわたしたちは、まるで巨大アートとでも言えるかのような、そこに純度高く抽出された海の世界と出合うことになるのだった。

 

あんぐりと口を開け、絵画の大傑作でも目にするかのように見惚れて過ごし、わたしたちは生命の不思議に強く胸を打たれた。

 

来てよかったねと感想を述べ合いつつ水族館を後にし、今度は東へと進路を変え、わたしたちは古宇利島を目指した。

 

近づくにつれて海の緑が鮮やかさを一層増して、わたしたちは思わず声を上げた。

なんであれ上には上がいて、海にも別格中の別格が存在するのだった。

 

島に入って簡単に昼を済ませ、オーシャンタワーへとあがって、何も遮るもののない風を四方から受けながら一面に広がるエメラルドグリーンの海に二人で見入った。

 

時間間隔が失われていたから気がついたとき、時刻は午後3時に迫ろうとしていた。

慌てて、そこから一路那覇へとクルマを発進させた。

 

一時間ほど走ってまもなく那覇というところ。

ずっといい天気だったからよかったよかったといった話をしていると、誰かがそんな話を聞いていたのか、突如、激しい雨が降り出した。

 

しかしもう観光は終わって後は買い物して帰るだけであるから、最後の最後になっての雨のおでましが雨雨降れ降れとでもいったようになんとも愉快なことに思えた。

 

お目当てのTギャラリアには午後4時に到着した。

家内の後について歩いてのんびり過ごし、午後6時にカローラツーリングを返却し、空港の沖縄料理の店にて夫婦にて酒盛りし打ち上げを行った。

 

あとは免税店で品物を受け取り搭乗の時間を待つばかり。

 

最後の最後、この完全無欠な旅の終わりにちょっとした事件が起こるなんてそのときわたしたちはつゆほども想像していなかった。

2023年9月9日朝 シルー パンケーキとそば粉のガレット

2023年9月10日 美ら海水族館

2023年9月10日昼 古宇利島

2023年9月10日 古宇利島大橋

2023年9月10日夜 那覇空港にて女房と旅の打ち上げ