午後4時30分にジムを出て、4時34分西宮北口発の普通電車に乗り芦屋に向かった。
駅を降り、芦屋川を南に向いて歩いた。
カラダは火照っていたが風が清涼で芦屋の秋が心地よく心身へと染み入っていった。
おいしい中華料理を食べよう。
そう言って家内が店を予約してくれていた。
土日は特に混み合う店であるから、よく席が取れたものである。
さすが、家内。
途中、仕事の電話がかかってきたので話しつつ店へと進み、着いたところで向こうから家内がやってくるのが見えた。
この日はヨガのあとで西田辺に足をのばし、きじ歯科で歯をケアしてもらったのだという。
まもなく午後5時。
店内へと案内された。
まずは家内が蒸し鶏や春巻きといった前菜を注文した。
めちゃくちゃ美味しくてお酒も進んだ。
時間を追うごと他の席も埋まっていった。
ここは芦屋、富裕の度で抜きん出て全国屈指。
元から福運に恵まれた方々が集って暮らし、そこに新たに運の拓けた者らがどんどこ合流するから、この地の富裕の厚みは盤石とも言えるだろう。
だから店内はもとより店の前を単に通り過ぎる人の雰囲気も他の地域と一線を画していた。
しかし、中には紛れ込んだといった類の人もいるのだとわたしたちは知っている。
様々な出自が背景にあって、少なくない人がよそ者であるようなものであるから、その気になればここでは誰にでもなることができるのだった。
郷里の者が聞いたら噴飯に堪えないような嘘八百で身上を作り替え、その擬態はペテンの職業病というのだろうか、過剰の域へと達しているが、富裕の地であるからみなが優しくそういった大風呂敷にも目をつぶってくれる。
その大胆な嘘の数々に感心しつつ、そんな人物をも包容するこの地の方々に吹く上昇気流にあやかりたいものだと話し、ビールからワイン、ハイボールそして紹興酒へと移り、午後7時を過ぎると芦屋大丸の食料品の値が下がるから、ちょうどその頃合い、あんかけチャーハンでしめて店を後にした。
2割引、3割引は当たり前。
中にはえっこれが半額といった掘り出しものがあって歓喜して、わたしたちは次から次へと買い物かごに割引シールの貼付された品を放り込んでいった。
芦屋の恵みをたっぷり携えて夫婦で破顔。
電車でわたしたちは帰宅の途に就いた。