正月休みをどこで過ごすか。
その決定までには紆余曲折があった。
早い時期からホテルを押さえにかかったが、目ぼしいところはすでに予約でいっぱいでキャンセル待ちを余儀なくされた。
有馬、淡路、伊勢志摩など温泉の定番宿に複数の申し込みを入れ連絡を待った。
師走に入って案の定、幾つものホテルから部屋が空いたとの情報が寄せられた。
最終的に伊勢志摩観光ホテルと鳥羽国際ホテルで迷い、迷いに迷った末、空いた部屋の広さを決め手に後者を選ぶことにした。
ただ前者についてはお伊勢参りをする頃にいい部屋が取れたので、先後するだけで結局は年初にかけて両方を訪れることになった。
1月2日の朝、助手席に家内、後部座席に長男を乗せクルマで出発した。
京滋バイパスの幾つかのポイントで渋滞に巻き込まれたがおおむねスムーズにクルマの列が流れ、ほぼ予定通り昼過ぎにはホテルに到着することができた。
部屋で早速ワインを開け、テレビでラグビー大学選手権の準決勝を観戦し、この瞬間これぞ正月休みとの実感が込み上がった。
慶応に一点差で勝利した京産大を早稲田が一点差でくだし、この手に汗握る試合展開がまた正月休みの感興を盛り上げた。
ちなみに京産大のキャプテンは芦屋ラグビーのライバル伊丹ラグビーの当時のキャプテンで、息子と同学年であったからその面影をわたしも家内も覚えていた。
だから早稲田を応援しつつも京産大キャプテンの活躍には喝采を送った。
試合観戦後はサウナと温泉で過ごし、夕飯に備えて部屋で待機した。
家内が魚介の名店 一栄を予約してくれていた。
人気店であるから満席で、先客が帰るまでわたしたちは待たねばならなかった。
午後7時半になって席が空いたとの連絡があってわたしたちは歓喜した。
ホテルのバスで店まで送ってもらい、カウンター席に三人並んで腰掛けた。
伊勢海老をはじめ魚介の主力メンバーを次々頼み、あまりの美味しさに感嘆しつつ家族三人で余さず平らげていった。
場末感の漂う店で地元客にまざってする正月の食事はなかなか情緒があって、各自の胸に印象深く刻まれたに違いなかった。
食後またホテルのバスに迎えに来てもらった。
ネットフリックスでドラマをみながら部屋に持ち込んだお酒を飲み、まもなくわたしはまどろんだ。
いつまでも続く家内と長男の話し声がぼんやりと遠のいて、わたしは今年一番の安眠へといざなわれていった。